召喚の神殿 3
気がついたら、オレは地面にぶっ倒れていた。
森の中だ。木漏れ日がまぶしい。
「……は?」
オレは勢いよく起き上がると、当たりを見渡した。
「……またかよ……」
白い大理石の柱が並ぶ荘厳な建物──そこに絡まる緑のツタ。
中央の門には、女神の紋章。
隣を見ると、ツーも同じように地面に転がってうめいている。
服はほつれ、剣には傷。顔はすすけ、泥がついている。
「……あれ? オレ、死んだ?……?」
「……バカを言うな。死んだら会話できないだろ」
「ああ……召喚の神殿じゃねぇか……!」
辺りを見渡して、気付いたようだ。
「そう、オレたちは、またタイムループした。お前は初めてかもしれないが、オレは2回目だ。」
「てことは……また振り出しかよ?」
ツーが、悔しそうに肩を落とした。
1年近くかけて、ようやく魔王城にたどり着いたのに。
そのときだった。神殿の中から、1人の若造が現れた。
なで肩、黒髪、地味な顔。
「おいおいおいおい……っていうか……オレじゃね? あれ。1年前の」
「オレにとっては2年前だな」
「やっぱり……タイムループ……」
ツーが納得しかけたそのとき、オレ──いや、2年前のオレがこちらに気づいた。
「……あの、すみません。ここって……?」
きたきた、困惑ボイス。
オレはゆっくりと立ち上がって言ってやった。
「……よく来たな……勇者よ」
「へっ?」
「今ちょうど、神殿で女神から命じられたところだろ? "魔王を倒してこい"って」
「……なんで知ってるんですか?」
「わかってるさ。オレたちも、かつてその使命を授かった者だ。……オレのことは、勇者ワンと呼んでくれ。こいつは勇者ツー」
「よろしくぅ……」
「えっ……?」
「お前は3番目だから、勇者スリーだ。いいな?」
「ちょ、えっ、えっ、あの……?」
オレたちは力強くうなずいた。
「……ちょっと待って、情報量が多すぎて頭がパンクしそうなんですけど!?」
「説明は後回しだ」
「そうそう、まずはスリーの分の聖剣エグセクターを取りに行こう」
「えぐせくたー……?」
「では、共に旅立とう。魔王を倒す冒険へ!」