表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

魔王城 1

 オレは、ついにここまで来た。


 灰色の石畳を踏みしめるたび、ブーツ越しに伝わる重たい空気。

 薄暗い壁に掲げられた松明が、巨大な広間を淡い光で照らしていた。


「……これが、魔王城の大広間か」


 目の前の階段の上に、巨大な王座。そして、その上に座ってやがった。


 漆黒のローブを羽織った影……いや、あれが魔王だ。

 背筋がすうっと冷える。


 この1年、どれだけのことがあったか──

 信じた仲間の裏切り。

 愛し合った君を犠牲にした絶望。

 だが、ついにここまでたどり着いた。


『やっと来たか』


 低く、地の底から響くような声だった。


 漆黒のフードの下は影になって顔も体もよく見えない。

 けれど、その輪郭の一部が赤黒く脈打つように光っている。


『……お前が新しい勇者だな』


 魔王の眼らしきものが、ぎらりと輝いた。

 その視線が、全身を貫いたような気がした。


『待っていたぞ』


 その声に、ぞくりとした。畏怖……それとも、本能的な恐れか。


『だが、勇者ごときに何ができるかな』


 その言葉とともに、魔王が立ち上がった。

 大広間の空気が音を立てて割れた気がした。


「……うっせえんだよ」


 オレはゆっくりと、剣を抜く。


 聖なる剣、エグセクター。刃の中央には、神々の紋様。オレの信念──それに呼応するように、剣が白熱を発していた。雷光のような輝きに、大広間の影が退く。


 左腕には、コランダムシールド。女神が与えてくれた月の盾。中央のサファイアが、静かに輝きを放っている。銀の紋様が、敵意を感じてか、淡くゆらめいた。


「オレは……お前を倒しに来たんだ。たった一人でな」


 魔王は、フっ……と笑った。声に出してはいないが、その雰囲気だけでわかる。


『お前のような未熟者、1000人が束にならねば……ワシを倒すことなど、できぬ!』


 魔王が右腕を掲げる。

 そこには黒金のブレスレットがはめられていた。表面には、禍々しい紋様。


 あれが魔王の証、ガルヴァスの腕輪だ。

 見ているだけで、意識が引きずり込まれそうになる。


 ドンッ!!


 深紫と暗赤の閃光が、魔王の腕から解き放たれた。

 オレはすかさず盾を構える!


「──ッぐうっ!!」


 衝撃。コランダムシールドがキィィん、と音を立てる。

 だが……防ぎきれない!?

 まるで全身に、雷と炎を同時に叩きつけられたような感覚。


 魔王の腕から発せられる閃光が激しさを増す。


 なすすべもなく、視界がゆれて、オレの意識が遠のいた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ