若隠居とホレイ星(2)
数人ずつのグループを作り、山の中に散って、発芽の兆候を探す。
僕たちも目をこらして地面を見る。
「どこでやんすかね。掘ってみるでやんすか?」
「いや、そこに種があったら発芽しなくて、収獲できなくなってしまうことはないかの?」
「それはまずいぜ」
「うむ。地道に探すぞ」
「それにしても、日が当たるところは地面がぬかるんでるし、日陰は凍り付いているし、何か、植物も大変な環境だね」
「なのに芽が出たらすぐに食べられたりねー」
「感謝して無駄なく食べようね」
僕たちは言いながら、何かそれらしい兆候はないかと視界を広く持ちながら辺りを見回していた。
そんなとき、離れたところで声が上がり、僕たちはそちらへと視線を向けた。
「あったぞー!」
そう言った男が誰かわからなかったが、すぐにわかることとなった。地面が盛り上がったかと思うと、あれよあれよという間ににょきにょきと成長していき、ものの数十秒で高さ十メートル近くになってしまった。
樹木という感じではなく巨大になりすぎた草という感じで、真っ直ぐに伸びた太い茎の周囲にトゲトゲが生えている。そして見ていると、上の方には放射状にピンク色の花がつぼみを付けて、ラッパ状の花を開花させていく。
ホレイ人数人が忙しくそのトゲトゲを足がかりにして茎を駆け上っていく。
そして彼らが花に到達する頃には、花はしぼみ、そこに実を付けていた。
ドッジボールくらいの大きさか、それ以上だ。
それを駆け上ったホレイ人は、軽く捻って落とす。そして下で待ち構える別のホレイ人が、ネットのようなものでうまく力を殺してキャッチし、実を運搬する別のホレイ人に渡していく。
「あれって、ラクロスでキャッチする要領だな。やったことあるぜ、俺」
「それじゃあ安心だな。任せたぞ、ミキヒコ」
僕たちはそれを見て要領を掴むと、どこかから発芽しないかと探すのを再開した。
すぐに、それは見つかった。地面が小さくぽこりと持ち上がった──と思ったら、ニョキッと緑色の棒が地面の下から飛び出して来たという感じだ。
「出たあ!」
叫ぶと同時に皆がこちらを振り返る。
その間にもその棒は太く長く成長を続け、つぼみを付けようとする。
「うわ、そばで見ると凄く大きいなあ」
大きさに思わず圧倒された。
「行くぞ!」
しかしチビの声に引き戻され、幹彦も僕も、借り物のネットをつかみ直して、茎を駆け上がっていくチビと飛んで行くピーコを見守った。
花はしぼみ、実に変わっている。
「いくぞ!」
チビの声が降って少し後、実が落ちてきた。
「よし、まずは俺からいくぜ!」
幹彦が言って、落下地点に合わせて位置を修正した。そして、実をすくい取るようにして実をネットに収め、それをふわりとガン助に渡し、ガン助は実を収納バッグに収めた。
見ていると、ピーコの落とした実が落下してくる。
それを僕も細心の注意を払って衝撃を逃すようにしてネットに収め、無事を確認して、ガン助に渡す。
そうして全ての実を収穫すると、茎は茶色く細くなってきた。
「まさか、枯れてきたのか!?」
「チビ、速く降りて来て! 危ないよ!」
言うと、チビは急いで茎を駆け下りてきて、チビが地面に降り立ったすぐあとで、茎は完全にしおれて枯れてしまった。そうして、とけるように消えてしまった。
「消えたぞ!?」
「変わった植物でやんすねえ」
僕たちはそれを信じられない思いで凝視した。
「味がよければ地下室に植えたかったが、これでは無理かもしれんな」
「ここでおもいきり食べておくのがいいようじゃの」
「植物性肉祭りー」
僕たちはいそいそと、次の発芽を探し始めた。




