若隠居と異星人(8)
その後UFOがもう一機飛んでくると、宇宙人が現れた。
それを僕たちは、こっそりと見ていた。魔力をじゃんじゃんと幹彦の周囲に出すと、インビジブルをどうにか使えたのだ。やってみるものだ。
それで壊れたUFOを牽引して上空へと飛んでいくのを見送ると、やれやれと息をついた。
「これで安心かな」
「リーも捕まったみたいだしな」
「うむ。しかしどこの世界にもああいうやつはいるものだな」
チビがしみじみと言うのに、全員で頷いた。
「知恵をつけたら悪知恵も発達して、ああいう考えを持つ人も現れるんだろうな。どうしても」
「宇宙人も変わらねえなあ」
「ロマンが壊された気分だ」
チビが憤然として言い、ぶるぶると体を振った。
「ええい、これで辛気くさいのはおしまいだ。美味いものを食いに行こう。変な名前のスープとか長ったらしい名前の肉とか」
それで僕と幹彦も笑った。確かに長い名前だし、変わった名前だ。
「よし、行くか!」
「串刺しの魚も楽しみでやんすね」
「うむ。腹もいい具合に空いておる」
「テキーラも飲みたいのう」
「いいよ、飲もう!」
「出発進行ー」
僕たちは車に乗り込み、砂漠を走り出した。
「あ。せっかくだから一度だけUFOに乗せて欲しかったなあ」
「しまった、忘れてたぜ」
「残念だが、間近で見られただけでよしとするか」
「そうでやんすね。訳のわからない機械より美味しいご飯でやんす」
「そうじゃの」
「ちょっとだけもらったゼリー、おいしくなかったー」
それに僕たちはしばし黙り、思った。
「味覚の趣味は合いそうにないね」
「ああ。交流してもお互いに困りそうだぜ」
想像すると、大変そうだ。
昔、鎖国しているときにペリーが来航して、歓待することになった。そのとき、互いの食習慣の違いで、「魚を生で食わせるとは」「どろどろとしていたり、変な臭いがする固形物」などと言ってお互いに苦労したらしい。
まあ、同じ時代を生きる地球人同士でも、「そんなものを食べるのか」「そんな食べ方信じられない」ということはあるのだ。広い宇宙の別の惑星の生き物同士だ。合わなくても不思議はない。
「俺たちは俺たちが美味いと思うものを食おうぜ」
「賛成」
僕たちは町を目指して砂漠を走った。




