若隠居の巨大ガニ討伐(1)
ラドライエ大陸の旅も、かなり進んだ。
自然と各種族の集落をつなぐようにできている道を使って移動するのが基本で、時々横道にそれて魔物を狩ったり何かを収穫したりしている。
港町から山に入り、今はまた海沿いの町に辿り着こうとしているところだ。
山の上から見ると小さな湾になっていて、そこに建物が点在しており、小さな桟橋には小舟が並んでいる。間違いなく、漁村だ。
僕たちは近付いて行きながら、ワクワクとして話をしていた。
「海の幸がありそうだぜ」
「ウニ、カニ、マグロ、エビだな」
チビがそわそわとしている。
「何がとれているかはわからないけど、魚とか貝とかあると思うよ」
言うと、ピーコたちもカバンの中で騒ぎ出す。
「海鮮丼みたいに色々乗ってるのがいい!」
「刺し身もいいっすけど、焼きとかフライも食べたいでやんす」
「ツウはアラ煮じゃの」
それを聞いて、僕も幹彦も、期待が膨らむ。
「もう、全部食べたいぜ。なあ」
「そうだよな。地元ならではの食べ方とかあるといいなあ」
言いながら近付いて行くと、潮の匂いがどんどんと強くなり、それに比例してどんどんと期待が増していく。
さぞや活気のある雰囲気がと思いながら町に入り、そこで僕たちは首を傾げることとなった。
どの獣人も浮かない顔をし、溜め息をつく人もいる。食堂にいた漁師らしい男たちは、背中を丸め、やや下を向きながらアルコールのグラスを持ち、女性に溜め息をつかれていた。
「ああ、いらっしゃい」
僕たちに気付いて、女主人が声を出す。
僕たちは気を取り直し、彼女に訊いた。
「この子たちも一緒でいいですか」
「構わないよ。お兄さん、テイマーかい」
それで僕たちは空いたテーブルに着いて、壁に貼られたメニューの札を見た。
「いっぱいあるなあ」
焼き魚、煮魚、揚げ物、刺し身、定食、盛り合わせ、和え物。それも各々いろんな種類があって、店の壁をぐるりと一周している。
「どれも美味そうで迷うぜ」
「うむ。全部食べるのに何日かかるだろうな」
わくわくしながら言い合っていると、申し訳なさそうに女主人が言った。
「ああ、やっぱり、魚介類が目当てだよねえ」
その言い方に、嫌な予感がする。
「え、あの……?」
女主人は溜め息をついて言った。
「ちょっと問題があってね。ここのところ、何も獲れないのさ」
僕たちは全員、「ガーン」という顔付きで女主人の言葉を聞いた。
「ああ、そうだ、ちりめんじゃこならあるよ」
「……まあ、魚だね」
「い、今のお勧めは、スライムゼリーと揚げパンと野菜がゆだよ」
「海辺の要素が全くねえぜ」
食堂にいた全員が重い溜め息をついた。




