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チビの秘密

 チビも僕も幹彦も、動きが止まった。

 ワイバーン。確かゲームでよく登場する、空飛ぶ大きなトカゲみたいなやつだよな。

 見たところ、翼は片方で畳2畳くらいありそうで、尻尾は3メートル弱、体は衣装ケースくらいか。くちばしは鋭く、その内側にはずらりと尖った歯が並んでいた。爪も見るからに鋭く尖って硬そうで、マグロ釣りの針のようだと思った。トカゲというよりは、空を飛ぶ首の長いエイみたいだ。別の生物かも知れないな。

「チビ、どこもケガしてないか?怖かったな」

「ワン!」

「史緒。現実を見ろ。チビはチビじゃなかっただろ?」

「嫌だ!」

「チビは犬じゃない。犬はあんなにデカくなったりこんなに小さくなったりしない」

 幹彦は嘆息した。

「チビが神獣ってやつなんだろ?」

 チビは幹彦を見、僕を見、頭を足でかしかしと掻いて、大きくなった。

「子犬生活も新鮮だったが、バレたか」

 子犬の時に吠える声とは全く違う。

 犬なのに、喋ったのか……。まあいいか。

 改めて見ると、大きいな。胴体がマイクロバス程度の大きさがあり、そこに頭と尻尾が付いていて、尻尾がぶうんぶうんと緩く振られていた。

「うわ、ふかふか!」

「この滑らかな手触り、最高だぜ。これで昼寝したい」

 僕も幹彦も、チビでないチビに抱きつき、毛並みに陥落した。

「そうだろう、そうだろう」

 チビは毛並みを褒められて得意そうだ。

「チビはチビだ。犬種なんてどうでもいいんだよ。

 でもバレたらどこかに連れて行かれるかもしれないから、黙っておこう。よし。チビはこういう犬種だと言い張ろう」

「そうしよう」

「いや、それは相当無理があるだろ」

 幹彦がそう反対意見を言う。

 なので、

「よそでは大きくなるなよ、チビ」

と言うと、

「わかった、任せろ」

 とチビは請け負った。

「いや、この姿でチビはどうなんだよ、史緒」

「初めは小さかったから……」

「名前あるあるだな」

「威厳は確かにないな……」

 チビは苦笑した。

 疲れと眠気と安心感が襲って来て、どうでもよくなってきてしまった。

 これではいかんと再起動し、時計を見たら15分ほど経っていた。

 エイのお化けを見た。これはどうしようか。

「エイって味噌汁に入れるんだよな」

「史緒、これ見て食うのかよ」

 幹彦は呆れたようにそう言った。


 エイの尻尾は牛のテールのようで、今度煮込んでみようと思う。胴体部分は、ステーキと唐揚げとフライにする事にして、そのように切り分けよう。首は網で焼いてみるか。翼は……唐揚げと煮付けかな。筍と白ネギと一緒に濃い目の味で炊いてみたら良さそうだ。味噌汁もやってみるか。

 そんな事を考え、

「でも、かなり表皮が硬そうだなあ。包丁が欠けたりしないかな。何か、こう、スパッとできないもんかな」

と言いながらエイを触る。

 と、エイは考えていたその形にばらされた姿に変わり、皮、爪、骨、内臓が別にまとまっていた。

「はあ!?」

 僕も幹彦も、今度こそ夢ではないかとそれを凝視した。

「驚くほどの事ではあるまい?むしろ、なぜ今までわざわざ手で解体していたのだ?」

「え?」

 チビと僕と幹彦は、お互いの顔を見合ってキョトンとした。













お読みいただきありがとうございました。御感想、評価などいただければ幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言] ワイバーンって意外とゲームでは聞かない名前じゃない? なろう系ファンタジーだと割とよく聞く名前だけどそれ以外だと以外と登場しない名前な気がする 自分はワイバーンが出て来るゲームって昔のFFシ…
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