表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/78

第17話 幕間・鬼将軍

 もはや戦にはならなかった。

 それほど容易く全てが終わった。


「キハク将軍! 鬼人侍部隊が既に敵の駐屯の騎士団を制圧しました。市民もほとんどが武器を持たずに降伏しております」

「そうか……」

 

 部下の報告を聞き、流石の吾輩も色々と戸惑う。

 長年に渡り人類連合との戦争を繰り広げてきたが、連合加盟国で八勇将すら輩出した王国の王都をこうもアッサリと陥落することができるとは思わなかった。

 先の大戦で国力の低下なども色々と理由はあるだろうが、やはりテラの弟が大暴れしたことにより奴らもどうすることもできなかったのが大きい。



「皮肉なものだな……あのテラが命を懸けて守ろうとした国と民たち……それを滅ぼしたのは兄を愛する弟……」


「はい……そして、皮肉であると同時に我らにはとてつもない幸運とも言えました。拙者もあのテラの弟の戦いぶりを見ておりましたが……正直、恐ろしかったです」



 その言葉に吾輩も頷いた。

 


――動くこと雷霆の……



 エルセに関しては間違いなく数年以内には、八勇将や六煉獄将と渡り合い、五年もすれば……

 それに、森でのあの攻防、姫様が割って入られたので不発であったが、もしあの時感じた異様な力を受けたら吾輩もただでは済まなかっただろう。

 

「ああ、誇張無しでエルセの戦闘の才能は兄より上かもしれん。妹の魔法センスや魔力量も常識外れ。二人とも間違いなく将来はテラを超え、人類の勇者となり、我が魔王軍に牙を向いていたであろう。もしテラが存命であり、あの弟妹がテラと三人並んでいる姿を想像するだけで戦慄する」


 恐らくあの三人を同時に敵に回せば、何百何千、それどころか何万もの兵を失っていたであろう。

 それどころか、大魔王様にまで到達していたかもしれぬ。


 しかし、人類共のくだらぬ醜いメンツ争いに巻き込まれ、その未来は無くなった。


 結果的にテラは死に、そしてあの弟妹ももはや勇者としての道を歩むことは無いであろう。

 その上、クンターレ王国までこうもアッサリと陥落できた。

 これは紛れもなく人類に大打撃であろう。

 とはいえ、なかなかこれはこれで頭を悩ませてしまう。

 順序がでたらめになっていきなり王都を取ってしまったからだ。



「して……どのようにします? 捕虜の数が多すぎますし、我々は近隣にある都市や砦などを陥落させずにいきなり王手を取ってしまったため、ある意味でここは陸の孤島。魔王軍の大軍を呼び寄せてここを完全に我らの領土にするにも、流石に人類連合も黙っていないでしょう」


「だろうな。吾輩もせいぜい、あやつは恨みのある貴族を討つぐらいになると思っていたが、まさか王都を丸ごと陥落させられるとまでは思わなかった」


「ええ。仮に捕虜を全滅したとしても、あまりやり過ぎると返って人類に怒りの士気を上げてしまうことに……」


「分かっているが……ある程度の恐怖は必要だ」



 そう、本来ならばありえぬことだ。吾輩も長年魔王軍の将軍として人類と交戦してきた。

 人類との争いは所詮は地上の領土争いであり、それを奪い、時には奪われ、その繰り返しである。

 時折、大都市や国を亡ぼすことはあるが、それは周辺からジワジワと領土を奪い続けた果てでの滅亡であり、そこに至るまで長い時間を要する。

 しかし、昨日たまたまテラの弟と会い、地の利を教えてもらって軍を誘導し、そして一日で人類の中でも中堅に位置する王国の王都を陥落させてしまったのだ。

 陥落させた後の準備が何もできていなかったので、何とも悩ましいことになってしまった。

 だが……



「……これを利用して、人類連合に亀裂を入れるか……」


「?」



 王都を我らの領土にしようとしても、その周辺が魔王軍の領土ではない以上、守り切れるものでもない。

 むしろ、周囲を囲まれてしまう恐れがある。

 そして民を皆殺しにしてもそれはそれで問題になる。

 ならば、奴らを精々利用させてもらおう。


「民衆全てを捕虜にする必要はない。奴らには働いてもらおう」

「それは、奴隷にすると?」

「いや、奴らには……存分に世界に流布してもらおうと思ってな、今回の全てのことを……帝国の行いを……奴らにはその証言者として散ってもらおうと思ってな」

「はい?」


 やるべきことを決めた。

 すなわち……


「キハク大将軍! 別動隊より報告! 宮殿の隠し通路にて、国王を発見! 捕らえたとのことです!」

「……そうか……」


 だが、後始末の前に完全にこの国の滅亡を象徴することを行わねばな。



「今すぐ国王を連れてまいれ。尋問して可能な限り情報を吐き出させよ。そのうえで――――民衆たちを広場に集め、その前で刎ねろ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑面白いと思っていただけたら輝く星を、作者にブスッとぶち込んでください!!
とても大きな励みとなります!!
どうぞよろしくお願いいたします

★★新作です!!!! こっちの作品『冗談で口説いたら攫われた大魔王~知らなかった? 女勇者たちからは逃げられないよ』も応援してくれたらうれしいです★★※クリックでページに直接飛べます

+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ