第九話 浴室に打ちのめされる少女
ドラム式全自動洗濯機の力に打ちのめされた梓。
しかし最先端の浴室にさらに打ちのめされるのでした。
どうぞお楽しみください。
これからどうしよう……。
掃除、お料理、洗濯、どれも機械がやってくれちゃってる……。
お兄ちゃんに何もしてあげられない……。
このままじゃ、ただ世話になってるだけのお荷物……。
それじゃ駄目!
もっとお兄ちゃんの役に立って、お兄ちゃんのお嫁さんになるんだ!
女の子としての魅力が足りない私には、それしか手がないんだから!
「梓-。夕飯の前にお風呂入るか?」
「えっ!?」
い、一緒に!?
そ、そんな、まだ心の準備が……!
でもこれはチャンス!
「う、うん、入りたい、な……」
「わかった。ちょっと待っててな」
お兄ちゃんが壁の機械を操作すると、
『お湯張りをします』
しゃ、しゃべった!
な、なーんて、も、もう慣れたもんね。
しゃ、しゃべるくらい、ぜ、全然普通だもんね。
「十分くらいでお湯張れるから、着替え用意しておくといいよ」
「う、うん……」
そんなに早くお風呂入れるんだ……。
でもそれならそれでありがたいな。
お風呂に入ったら、気持ちも切り替えられるだろうし。
「そうそう、入ったら壁に付いてるリモコンで、『ジェットバス』使ってみて」
「じぇ、ジェットバス……?」
な、何だろそれ……。
バスが空飛ぶの……?
「まぁ使ってみればわかるよ。気持ちいいからさ」
「わ、わかった。ありがとう」
言われた通りやってみよう。
わ、広いお風呂……。
二人、ううん、三人でも入れそう……。
親子三人……!
駄目駄目! 気が早いよ!
ま、まず髪と身体を洗って……。
……このシャンプー使ったら、お兄ちゃんと同じ匂いに……。
! さっきから私ったら……!
は、早く洗って入ろう!
「……これ、かな……?」
『ジェットバス』って書かれたボタンを押す。
わ! なになに!? 泡が出てきた!
き、気持ちいい……!
こんなの、駄目……!
溶けちゃいそう……!
「お、梓。お風呂、どうだった?」
「……すごかった……」
「そうだろう! この家で一番気に入っているんだ!」
お兄ちゃんの嬉しそうな言葉を笑顔で流しながら、私は今後ジェットバスを使わない事を誓っていた。
だって駄目だよあんなの……。
何も考えられないくらい、気持ちが良かったもん……。
読了ありがとうございます。
あやしい意味じゃないですよ?
思った以上に疲れていた身体に、ジェットバスが思った以上に効いただけですよ?
単なる癒しですよ?
次話もよろしくお願いいたします。