第六話 料理に打ちのめされる少女
女の子の手料理、それは恋愛における強力なカード。
そのカードをいざ切ろうとする梓ですが、やはり打ちのめされてしまうのでした。
どうぞお楽しみください。
わぁ、これ、すごくいい……。
線香花火を囲んだ先輩後輩の、甘酸っぱい青春ラブストーリー……。
話が短いのも読みやすくていいな。
私もお兄ちゃんにこんな風にアプローチできたら……。
ってうっとりしてる場合じゃない!
このタブレットってやつ、すごい時間泥棒!
駄目駄目! 現実に向き合わなきゃ!
お掃除が駄目なら料理だよ!
もうすぐお昼ご飯!
私がお母さん直伝のご飯で、お兄ちゃんの胃袋を鷲掴みなんだから!
「お兄ちゃん、お昼ご飯どうする?」
「あぁ、それなら用意してあるよ」
う、さすがお兄ちゃん。
気遣いが嬉しいけど悔しい。
でもお兄ちゃん、お料理できたっけ?
昔「俺は食べる専門」って言ってたような……。
カップラーメンとかかな?
って何!? 次々にテーブルに器が並んでく!
「スープはビシソワーズ、前菜が鶏ハムと牛肉のトマト煮、メインが豚肉の洋風あっさり角煮で、これが自家製パンだ」
「えええぇぇぇ!?」
す、すごすぎるんだけど……!?
私の卵焼きとか筑前煮じゃ対抗できない……!
い、いいもんね。
お料理できるお兄ちゃんも、か、かっこいいし……。
「お、お兄ちゃん、お料理上手なんだね……」
「料理ってほどじゃないよ。最近は自動調理器がすごくてさ。材料入れたら自動で作ってくれるんだ」
これ全部材料入れただけでできたの!?
「それに材料も既に切ってあるやつとかもあるから、する事って言ったら調味料量るくらいかな」
お、お料理って何だっけ……?
「あれ? 何か嫌いなものあった?」
「う、ううん! びっくりしてただけ!」
「じゃあ食べようか。いただきます」
「い、いただきます……」
お兄ちゃんの料理は、悔しいけどとでも美味しかった……!
でもいつかその機械でも作れない料理で、お兄ちゃんをめろめろにしてあげるんだからー!
読了ありがとうございます。
卵焼きと筑前煮が上手に作れる女の子は、良いお嫁さんになると思います。
負けるな梓!
それにしても最近の自動調理器ってすごいですね。
圧力鍋で柔らか角煮を作ろうとして、箸で持てない柔らか角煮になる事なんてないんだろうなぁ……(遠い目)。
次話もよろしくお願いいたします。