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機動悪役令嬢フォルフィズフィーナ  作者: えがおをみせて


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第84話 戦場では思惑が交差する、そして現れる




「フミネが言っていたわ」


「どうした?」


「たしか、らんちぇすたぁの法則だったかしら」


「それはどういうものなんだい?」


「簡単に言うと質が同じなら数が多い方が、絶対勝つっていう感じだったかしら。ニホンの偉人は凄いわね」


「そうだね」


 大公夫妻の会話であった。絶賛戦闘中だ。そしてフミネの世界は、どうも日本が世界征服でもしていたらしい。


「でもそれは質が同じならっていう話だろ?」


「まあそうですけど」


「じゃあ、勝機はあるかもしれないね」


「頑張りましょう」



「なあ」


「なんすか?」


 右騎士、第1騎士団長フィート=フサフキと左騎士の会話である。


「敵、増えてないか?」


「今頃ですか。30分くらい前に増援来てましたよ。30騎くらいだから大隊で増援なんでしょうね」


「言えよ」


「言わなくても同じでしょう。ああ、相手が言ってた1日猶予って、コレのことだったのかもですね」


「おまえさ、この戦い終わって生きていたら、副団長な」


「えー?」



「よっつ!」


「あなた、そうやっていちいち数を数えなくてもいいじゃない」


 軍務卿デリドリアスの左騎士は彼の妻だった。


「いやだが、格好良いではないか」


「幾つになっても殿方はこれですから」


「しかし、フミネ様は格好良いと言ってくれたぞ!」


「まあ、娘ほどの年下に言われて、脂下がっているわけですね」


「そうではない、そうではないぞ!」



 ◇◇◇



 彼らの軽口は、己が不利を上っ面だけでも拭い去ろうと言う強がりの部分があった。事実、戦闘時間が進むにつれ、1騎また1騎とフィヨルト側が数を減らす。多数対少数の戦闘に置いて、少数側が数を減らすのは致命傷だ。


 だが、同時に勝ちが確定したという状況において、勝ち側に無理をしないという選択肢が生まれた。ヴァークロート王国において平民と貴族の差は大きい。それはフォートラントでも似たようなものだが、要は、騎士は概ね貴族階級出身者が多いのだ。こんな勝ち戦で無理な負傷を良しとするわけもない。すでに参戦した段階で手柄は十分なのだから。


 そんな強者の慢心が、ぎりぎりでこの戦場を支えていた。



「ぬああああ!」


「死ねええぇぇ!」


 そんな中でも、ヴァークロート側で必死に戦う者たちもいた。貧乏男爵家、もしくは男爵子爵家の次男、三男たちだ。手柄が必要だった。


 それが裏目に出る。


 フィヨルトの戦士たちは、相手の気配を感じることが出来る。虚勢を見破ることが出来る。だから、なあなあで戦場に立つものと、必死に手柄を上げようとする者を確実に判別することが出来た。


「獲物は分かるな。2対1だ。絶対に単騎で挑むな。確実に潰せ!!」


 軍務卿の声が戦場に轟く。ヴァークロート側は動揺した。なぜ少数側が得物を定める? 2対1などという言葉を発する。そんなことを考えている内に、戦況は変化していった。本来ならば1騎づつ潰せば何の問題も無い戦場で、1騎を倒す間に2騎が倒されるという、異常な状況が展開されつつあった。


「なるほど、フィヨルトは精強だ。こちらの士気は、今後見直す必要もありそうだ。しかし数の前ではな」


 マイントルート伯爵には余裕があった。


「行け。腑抜けに構うな」


「了解!」


 最初の連隊の翌日に到着し、そのまま戦闘に突入した増援部隊は、増援ではなく本命だった。領主軍ではなく、王国直属の職業軍人たち。貴賤を問わず実力によってのみ採用され、そして戦果だけによって評価される、得物を求める狩人の群れだった。



 ◇◇◇



「なるほど、後続が本命と言うわけか」


「これはかなり危ういですね」


「なあに、最初からずっと危ういさ」


 大公はそう返すも。戦力差は明らかになりつつあった。当初は40対80。それが35対100になり、今では25対90だ。


 終わりは近い。



「研究所には退避命令は出してあるさ。ベアァさんを護衛にしてフィヨルトに落ち延びさせよう」


「あなたっ!!」


「なにぃっ!!」


 戦闘を続ける『シルト・フィンラント』の目の前を、風が通り過ぎた。その風が敵の1騎を押し倒し、操縦席を圧し潰した。それを為したのは、話題にしたばかりのベアァさんだ。


「ファイン、フォルン。何をしている!」


「戦います!」


「我慢できませんわ!!」


「引け! 引いてくれ! 頼む!!」


「やめて、お願いだから!」


 大公夫妻の悲鳴は、幼い双子が戦場に出た事か、それとも戦果をあげてしまった事か。


 かの甲殻獣氾濫では、8歳の子供が戦場に立ったという。甲殻騎に乗ったわけでは無く、一人の歩兵として彼は聖女直伝のフサフキに類稀なるソゥドを纏い、大活躍をし、その後フィンラント=フィヨルトの婿となったと言われている。ヤード=フサフキ・ソゥド・フィンラント=フィヨルト。伝説のフサフキと呼ばれる一人だ。現在におけるフィンラント家の祖でもある。


 そんな化け物と、今の双子を比較している場合ではない。大公夫妻は必死にフォローにまわる。


 甲殻獣と人との闘争では訳が違う。まだ12歳の子供に、人を殺めさせるなど、大公夫妻は我慢がならなかった。また、同時にそれをさせてしまった不甲斐なさも。



 そんな時に颯爽と現れるのが、『悪役』達だ。



 ◇◇◇



「ファインとフォルンに何してやがんだ!? おらぁ!!」


「何をしているのでしょう。わたくしには、とても醜い光景に見えますわ!」



 ずうぅぅん!



 ドルヴァ砦の壁の上に4騎の甲殻騎が降り立った。


「聞こえてないならもっかい言うぞ、こらぁ。なに、して、くれてんだあぁ!?」


「フミネ、フミネ。口調がマズいですわ!!」


 たったの4騎。だが、そこには圧倒的威風が存在していた。



 お待たせの『悪役令嬢』そして『悪役聖女』、それと楽しくて猛々しい仲間たちの到着である。



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