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機動悪役令嬢フォルフィズフィーナ  作者: えがおをみせて


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第69話 ライトスタッフ




 会議から5日。奥程ではないが最重要機密区画に設定された訓練場で、実験が行われてようとしていた。


「格好良いですわ。さすがはオゥラくんですわ」


「うんうん、この格好良さが分かるとは、フォルテは流石だね」


 二人の目の前には、背中に二本のスラスターを装備したオゥラくんがいた。


 なぜ5日後になったかと言うと、ファイトンくんのキャパだった。4日の間に500個の簡易型ドライヤーを作成したのだ。その目は濁っていた。実は一人で作業を行ったわけはなかったのだ。


 スラーニュ・シャール・タルタード女男爵令嬢。工廠長パッカーニャが工廠から出向させて来た二人の内の片方だ。パッカーニャ女男爵の長女で、現在18歳。未婚。フィヨルトから送られた刺客である。ターゲットは勿論、新米士爵ファイトン・コード・エディターだ。彼は生き延びることが出来るか。



 そんなかんなで、第2回甲殻機スラスター装備実験である。第1回目はフォルテが背中を痛めるだけだったという、悲しい事件であったが、果たして今回は。


 操縦席にフォルテとフミネが乗り込む。主な観客は、第1騎士団長クーントルトと第2騎士団長サイトウェル、さらには双子だ。そして工廠関係者の面々は、甲殻腱をスラスターに繋ぎ、地上に各種計器を設置して、情報をモニターしている。


「パッカーニャさん、準備はよろしいでしょうか?」


「あぁ、こっちは全部、準備よろしだ」


「では、第2回試験、開始いたしますわ!」


「よっしゃ。オゥラくん起動!」


 オゥラくん、というか甲殻騎というロボットに乗ると、どうしてもテンションが上がるフミネである。日本人だから、仕方がないよね。



 ◇◇◇



 結果は散々であった。前回より良くなったと言えば、フォルテが謎の負傷をしなかった事、もう一つは確かにスラスターにソゥドが届いたことだが、余りに微弱であった。跳躍はおろか、単なる大型温風機状態である。


「完全なる一歩前進よ! はっきり言うわ。大成功!!」


 それでもフミネは高らかに叫んだ。そうなのだ、全く認識できていなかったスラスターに力が通った。この事実はかなり大きい。ゼロと1の差は巨大だ。


「じゃあ、これからの予定を発表します。甲殻組はスラスターの可動部の調整と、ドライヤーの増産。甲殻腱組は、研究。騎士組はスラスターを使って、跳躍訓練。特にクーントルトさんとサイトウェルさんは念入りに」


 いつの間にかもぎ取った、研究開発主任の名の元、フミネが命を下した。


「フミネはどうしますの?」


「わたしは技術組にアイデア、色々思い付きを提案した後、ソゥド訓練と左の練習ね」


「左、ですの?」


「うん。ヴォルト=フィヨルタに残っている部隊を回って、左騎士練習」


「わたくし以外とですの!? キイィィ、妬ましいですわ!」


 どこから取り出したのか、フォルテはハンカチを噛みしめていた。その様式美にフミネは悶える。いいねボタンはどこだ。


 ちなみに、第3から第5騎士団は、南西と南東にて演習の名の元、甲殻獣狩りに勤しんでいた。



「それでフミネ様の助言って?」


「ええっと、全部を総当たりで試せって。もう一つは全部数字で結果を記録しなさい、だったでしょうか」


「敬語、止めようよ」


「いやだって、男爵令嬢様ですから」


「今は職場の同僚でしょう」


「でも年上ですし」


「年上はお嫌い?」


「そ、そそ、そんなことはありません!」


「そう。なら良かった」


 男爵令嬢スラーニュとファイトン士爵との会話である。ちなみに距離が近い。すでに隣に座る二人の太ももは触れ合っている。スラーニュが攻める。


「わたしのことは、ラーニュでいいから。わたしもファーくんって呼ぶね」


「えええ?」


 ファイトンくんは、そこに狼やら、食虫植物やらを幻視した。怖い。



 ◇◇◇



 よく分からないまま距離の近い二人は、色々試した。とにかく試した。腱と神経をベースに、骨粉、肉、皮革、毛、脂、血液、はては粉にした核石まで。知らない人が聞いたら、完全にマッドサイエンティストであった。


「これは、凄い」


「うん、凄いね」


 スラーニャとファイトンの目の前に有る物は、現段階で最もソゥド伝導率が高い甲殻腱だ。神経を軸に骨粉を塗した上で脂に浸し、それを腱で編み込みながら、体毛で表面をコートしている。従来型に比べ、直径は5割増しだが、伸縮性に富み強度は3倍、ソゥド伝導率に関しては実に5倍。


 伝達速度は伝導率に弱く比例することを鑑みれば、恐ろしい成果であった。


「じゃあその素材構成で。特に骨粉と油の比率、それと腱と体毛の編み方かな。ああ後、コスト、メートル当たり幾らかかるか計算も忘れないでね。引き続きよろしく」


 喜び勇んでフミネに報告した二人に返されたの、そういう言葉であった。恐るべし日本の研究者。



 さてその頃、フォルテも奮起していた。フミネを取り戻す! そのためには甲殻騎でスラスターをある程度動かせるようにならなければならないのだ!! フミネを取り返すっ!! ヤバい人になっていた。


 そうして狂気に走ったフォルテは、まず『守り石』たる指輪を、銀鎖に通して背中にくっ付けた。逆ネックレス状態である。そこから甲殻腱を結び、背負ったスラスターに接続した。


 要は、要はだ、手で操るからダメなのだ。背中で操作する。それが出来れば、出来るはずなのだ。多分、きっと。そして彼女は、フミネがソゥドを実感した初日を思い出した。


「出来ますわ! やれますわ! 動かせますわ! わたくしなら可能ですわ!」


 スラスターを背負い謎の言葉を、いや意味は分かるけど暑苦しい、そんな言葉を叫びながら訓練場をぴょんぴょんと飛び回る大公令嬢がいた。狂気である。


「ファイン、お姉様が怖いですわ」


「大丈夫だよフォルン、あれはフミネ姉様のマネだよ」


 お互いに慰めあう双子。


「なるほど、狂気の沙汰というのは、狂気にならなきゃ出来ないって訳か。やるな、お嬢」


「流石はお嬢様と言ったところでしょうか。得るためには手段を選ばない」


 第1騎士団長と第2騎士団長の会話であった。それで良いのかライドシンパのサイトウェル。



 ◇◇◇



 そんなかんなで、6日後。第3回試験が行われることになった。


 ただし今回の試験はスラスターを動かすだけでは済まない。オゥラくんには工廠組によって全面改修が施されていた。具体的には、関節接続とソゥド伝達系を全て最新型甲殻腱に置き換えて、遊びの調節が施されている。これだけでもう、オゥラくん参式と言える。


 スラスター周りも改良が為され、伝達系の向上効果を見込んで小型化されている。さらにはスラスターそのものに可動範囲を与えられていた。


「ベクタードノズルまでやっちゃったかー」


 これにはテストパイロット、フミネも驚いた。



 さあ、試験が始まる。



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― 新着の感想 ―
[一言] 狂人のマネをして大路を走らばこれ即ち狂人である。 ライトスタッフ……選ばれし資質なのか、はたまたあ、軽い人々なのか。
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