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機動悪役令嬢フォルフィズフィーナ  作者: えがおをみせて


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第60話 核石とソゥドの可能性?




「僕も行くー!」


「わたくしもですわー!」


 双子が泣き叫び、フェンはおろおろとしている。カオスだ。だがそれも大公家の日常、日常なのか?


「あなたたちにはベアァさんを贈ったでしょう。今度はわたくしたちの番ですわ」


「おみやげ持ってくる?」


「おみやげが欲しいですわ!」


「適当に中型を狩ってくるから、それをベアァさんの増強装備にするといいわ」


 フミネが武闘派的な落としどころを提案する。


「うん、わかった」


「ご武運をお祈りしますわ」


「わぉん!」


 そうして、『パンツァー・リード』作戦に駆り出された各騎は、移動を開始した。



 ◇◇◇



 フィヨルタの住民にお祭りのネタを与えない様、一行は裏門から出立した。


「でさあ、第1から第7騎士団の団長全員が参加しているって、どういうことなの。いいの?」


「第1以外の副官は全員居残りですわ。それにしてもまあ、過保護にも程がある気がしますわ」


 フミネとフォルテがごちる。こんな動員は、甲殻氾濫でもない限りあり得ない。というか。


「皆さん、お嬢様とフミネ様の戦う様を見たいんですよ」


「そうなんだろうなぁ。だけどこれは、ちょっと凄くないか?」


 オゥラくんの両肩に乗る両名の言である。片方は宿屋の看板娘アレッタ。もう片方は自称公都最高の靴屋の倅、コボルであった。両名共に『金の渦巻き団』の中核メンバーである。彼らもまた、フォルフィズフィーナ関連では、過保護であった。



 先述した通り機動甲殻隊は、肩の乗せる以外の随伴歩兵も、輜重隊も連れて行かない。一日目の野営は甲殻騎を支柱のように扱い、そこに張られた天幕の下でのものとなった。1騎につき4名、11騎であるから44名。それに案内をする狩人たちを併せ、約50名が夕食を取っていた。


 ちなみに行軍中、狩人たちは交代で索敵をしながら、休みの間は甲殻騎の背負った背嚢に座っていた。ソゥドがあれば、人は甲殻騎より速く移動できる。ただし持続しないし、そう簡単に甲殻を割ることも出来ない。


 向き不向きがあるということだ。甲殻獣との闘いがメインのフィヨルトでは、そこら辺の分業というか、協働が重視されている。中央ではむしろ戦争での甲殻騎運用が主軸であり、甲殻騎万能主義とも言われる考え方が主流だ。ケットリンテの論文が黙殺されたのは、そういう事だった。


「ケッテもねえ」


「彼女が輝くのは、フィヨルトやクロードラントのような辺境ですわ。わたくしはそんな彼女の努力を認めますわ」


「確かにそうだね。うん、そうだ」


 近くで騎士の誰かが横笛を取り出し、静かに吹き始めた。パチパチとはぜる焚火と相まって、フミネはなんとなくしんみりと、だけど心地よさも感じていた。キャンプも悪くない。少なくとも研究室の机に突っ伏して寝るよりはマシだ。元々牧場で空を見ながら寝たこともあるし。


 ゆったりとした笛の音が旋律を奏でる。大公やメリア、その他の者たちもゆったりとそれを聞いていた。


「ん?」


 どこかで聞いたような。


「熱いぃいぃ~」


「しんみりと歌おうとしてもダメだって。もう何回聞いたと思ってるんだよ!」



 ◇◇◇



「甲殻素材がいっぱいですわ」


「こういう時ってどうするの?」


「背嚢の余裕分と食料が減っただけ、良さそうな部位を詰め込むって感じですね」


 第1騎士団副長、フィートが回答をくれた。


「ただし今回は、多分先に行けば行くほど貴重な甲殻が取れるでしょうから、ある程度の余裕を持たせましょう。場合によっては交換してから破棄ですね」


 今回の行軍については、大公とメリアはあくまで随伴の一騎の扱いという事になっている。戦闘時はどうとして、行軍責任者は第1騎士団長だ。


「途中で甲殻を換装していくっていのは?」


「無理ですよ。調律がめちゃくちゃになる」


「そうですよね」


 などというやり取りをしている間にも、狩人たちの指示の元、テキパキと素材が背嚢に収められていった。こういう時の取捨選択は狩人が詳しいのだ。


「肉はどうしますの?」


「とりあえず、甲殻猪のだけにしましょう。お嬢のお好みでしたよね」


「わたくしに好き嫌いはありませんわ」


 フォルテが胸を張る。年季の入った気張り方は、くだらない話題でも威厳をもたらすのだ。



 ◇◇◇



 そうして5日後、段々と生物相が変化してきていた。


「甲殻白狼が多いね。しかも風持ちが結構混じっている」


 第1騎士団団長クーントルトが言う。行軍責任者だ。


「風持ち?」


「風の核石を持っている甲殻獣ですわ」


「風を吹かせられるの?」


 それって魔法じゃんとフミネが思う。同時にアレとも考えた。ソゥドが外部に働きかける?


「ソゥドでそういう事って出来るのって、ああ、なるほど」


 フミネの理系脳が回転する。例えば照明なんかに使われている光の核石はなんだ。極限で考えれば、要は電磁波の放出だ。ホタルは化学反応で輝くが、光の核石はソゥドで電磁波を出している?


 熱の核石はもしかしたら赤外線か、それとも分子振動か。冷却があるのだから分子振動が本命かもしれない。風にしたって、周りにちょっとだけ圧をかけたり、振動を与えれば。


「おいおい、宝の山、もしかして?」


「どうかしましたの?」


 フリーズしたフミネをフォルテがのぞき込んできた。


「ねえ、フォルテ。人間ってソゥドを外に出せないよね」


「出せないと言うか、身体に作用する力ですわ」


「そういう事か……。そういう認識だってことなのかな」


 いやちょっと待て。さらにフミネは黙考する。例えばだ、人は風を起こすことが出来る。腕を振り回せばいい。それを筋力ではなくソゥド力で行えるとすれば。


「ちょっと、本当にどうしましたの」


「あ、ああごめん。ちょっと思いついたけど、今は『白金』だね」


「そうですわ! しっかりしなさいな」


「そうだね。あのクーンさん。ここからは種類は何でも良いので、属性の核石優先でもいいですか?」


「構わないけど、どうしたのさ」



「ちょっとした、日本の科学の応用ってヤツですよ」



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