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機動悪役令嬢フォルフィズフィーナ  作者: えがおをみせて


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第45話 連邦首都、ケースド=フォートラン




 悪役一行は王都を目指す。


 途中には侯爵領、伯爵領などがあるが、王都に近づくにつれ領地は小さくなる傾向があった。王都に近いほど上位の土地であるという、分かる様な、分からない理由によるものである。ちなみに、王都に近い領地程、その地に子爵だの男爵だのの代官を置き、ご当人は王都暮らしなんてことになっている。


 フォルテたちは、その地その地で挨拶と宿泊をするわけだが、幾つかの領地でチンピラ騎士に絡まれてはなぎ倒していった。フミネに至っては、ご老公様の漫遊記だなあ、などと感想を持ってしまうほどの頻度だった。当然無敗である。


 ちなみに宿泊代を払い、それにちょっとした上乗せをして歓待するのが連邦における暗黙の了解だったりする。しかし舐められたのか、明らかに質素な食事が出てくることも多々あった。曰く、王都近郊は物価が高い、だそうだ。遠まわしに田舎者と言われているのに等しい。


 それでも模擬戦を吹っ掛けられない限りは無視をして、一行は王都へ向かった。そうして大公都フィヨルタを出発して約2週間後。



「でっかいねえ」


「そうですわ。あれが連邦首都にして王都、ケースド=フォートランですわ」


 皆がいるのは、西部から訪れた者たちが一度は立ち止まると言われる、王都を見下ろす小高い丘だった。ご丁寧に茶屋らしきものまで立ち並び、客引きまでやっている。それなりに往来もあり、ここで王都を見てから立ち去る者、向かう者たちがいる、それくらいには絶好のロケーションだ。


 フィヨルト一行も半数は初見であり、王都の巨大さに驚きを隠せない。もちろんフミネもその一人だ。


「これ、どれくらい大きいの?」


「そうですわね、大きさは分かりませんけど、人口は15万くらいと言われていますわ」


「15万人が生活する都市を城壁で囲んでるんだ。すごいなあ」


 この規模の都市を高さ5メートル以上の城壁が囲んでいる。ひとえにソゥドと甲殻騎の力によるものだ。そうでもなければ、このような分厚い壁を都市の全周には建設出来なかっただろう。


 ちなみにフィヨルト全体の人口は2万に及ばない。フォートラント全体と比較すれば、人口比で10倍以上となる。戦争? 冗談を。


「さ、行きますわよ。フォートラントの皆さん、口利きをよろしくお願いいたしますわ」


「了解いたしました」


 ターロンズ砦から付けられた騎士たちは、ここまで全く役に立っていない。せめて王都入りくらいはと意気込んだ。真っ赤なお鼻のトナカイさん状態で可哀相だ。ある意味、道中のごたごたをフォルテとフミネが蹴散らしてきたのが悪い。


 ということで、フィヨルトから押し寄せた一行は、王都西門の貴族専用案内へと向かった。



 ◇◇◇



「これは、心の底からお前のためを思って言っているんだ。いいから、とにかく、最短で最速で、恙なく通せ。紋章や書類に不備は無いんだ。例え手違いでもお前らに非はない。もう一度言うぞ、心を折られて娘に笑顔で会えなくなりたくなかったら、通せ。脅しじゃない。アレはやるんだ。すでに10人じゃすまない」


 王族や有力貴族たちには、とっくにフォルテご一行の所業は多かれ少なかれ伝わっていた。なにせ道中の騒ぎの直後から、その震源地たる各領地から2日おきくらいで早馬が、まさに全力で飛び込んで来ていたからに他ならない。もちろんその中には、クロードラント侯爵からの報告も含まれている。まるで怪獣の進撃だ。


 だが門番たちは知らなかった。仮にも他国の大公妃、大公令嬢一行が先触れも出さずに王都に到着するなど、想像の埒外だったのだ。故に怪しんだ。


 そしてそれに応えるターロンズ砦組の必死の説得が繰り広げられた。


「酷い言われようですわ」


「胸に手を当ててお考えなさい」


 高い聴力を持つ、フォルテとメリアには筒抜けだったわけだが。



 待つこと約15分。一行は王都へ乗り込んだ。


 フォートラントでは黒を忌色とする傾向がある。逆に白は貴色とされる。そして、西門から貴族街を進む甲殻騎4騎の内3騎は、濃灰色で統一されていた。一応金と紫と白のラインで装飾されているが、それでもそれを見た街の人々は恐れをなしたように道の端に固まってしまっていた。


「また、随分と怖がられてるね」


「仕方ありませんわ」


「だけど堂々と行くんだよね」


「もちろんですわ。わたくしたちには、なんら恥じる事などありませんわ」



 ◇◇◇



「それでは我々はここで失礼いたします」


「ご苦労様でした。道中の案内、感謝いたします」


 フィヨルトを代表して、メリアがターロンズ砦の騎士に礼を告げる。長い旅路であったが、彼らとはここでお別れだ。多分この後、王宮に駆けつけて山の様な報告をすることになるだろう。大変な心労だろうが、知ったことではない。


「さて」


 メリアが振り向いた先には、大きな門扉を構えたお屋敷があった。王都大公邸である。


「こ、これは一体!?」


 何事かと飛び出してきた大公邸の執事や侍女たちは唖然としている。


「大公妃並びに大公令嬢2名の到着ですわ。過度な出迎えは無用! 居室の準備をお願いしますわ!」


「うわあ、これって抜き打ち査察じゃ……」


 職員たちを憐れむフミネの声は、空しく空に消えた。



 何にしろ、旅の往路が終わった。



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