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機動悪役令嬢フォルフィズフィーナ  作者: えがおをみせて


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第25話 全ては月が満ちる時に




「泣かないでくださいまし」


「いやその、フォルテも泣いてるじゃない」


 なんかノリについていけないフミネは当惑する。


「心の汗ですわ!」


「いや、そういうのいいから。熱いのは好きだけど、わたし、置いてかれてるから」


「ぐすっ、もう大丈夫ですわ。皆さま繰り返しましょう、彼女こそが異界より現れし、フサフキの名を持つ聖女。フミネ・フサフキですわ」


 うおおおおおお!


「そして、皆さまがご覧のとおり、わたくしの左の翼。先ほどのオゥラくんを見て分かりましたでしょう?」


 うおおおおおおおお!


「さらに申し上げれば、彼女がこちらに来て3日目にして、すでに平均以上の強さを持っていますわ。ソゥドというものを知ってから3日ですわ!」


 場がざわめく、フォルテは胸を張る。フミネはビビる。


「あの、あんまり煽らなくてもさ」


「さ、ご挨拶なさいまし」


「ええー」


 フミカが下の方を見れば、キラキラとした涙とギラギラとして眼差しが光っている。正直怖い。


「えっと、あの、聖女かどうかは分かりませんが、それでもフォルテの翼を目指している、フミネ・フサフキって言います。ニホンから来たのも本当です。これからよろしくお願いします」


 ……うおおおおおお!!


 一瞬の間をおいて、例の轟が響く。本当、この人たちは何なんだろうとフミネは思う。



 ◇◇◇



「ここに集まってくださったのは、わたくしが信じる同胞たちですわ。フミネの紹介をしたかったことが一つ。もう一つは、今後についてですわ」


「今後……」


 『金の渦巻き団』のだれかが呟いた。


「そう、今後ですわ。現在わたくしがおかれている状況はご存じでしょう」


 とたん『金の渦巻き団』達から怒気が立ち上る。先ほどまでの燦々とした涙が血涙に変わったかのようだ。


 そうしてフォルテは説明を続ける。今回の婚約破棄が建前では、自身の甲殻騎適性の無さが原因であるとされているが、それは表事情で、実際には王太子の我儘を利用した中央派閥の謀略である可能性が高いこと。そんな折に現れた、現れてしまった、フミネという左翼の存在。しかも聖女である可能性が非常に高い。


「よって、大公家はフミネの存在を当面秘匿することとしましたわ。来るときに向けて。ですがこの場を設けてまで皆さまにフミネを紹介した理由、それはただひとつですわ」


 フォルテがすぅと息を吸い込み、発言する。


「わたくしが皆様を信頼しているからですわ! 10年以上も前から、共に遊び、共に修練し、共に暴れ、共に笑ったわたくしの同胞ですわ。正直申し上げて、弟のライドの同胞がここに居ないことが悔しくてなりませんわ」


 『金の渦巻き団』の皆は聞き入っている。


「婚約が破棄された以上、今後のフィヨルトの道は二つですわ。一つは従来の予定通り、ライドを大公太子として進むこと。もう一つは、中央に靡いてしまったライドを排し、わたくしがフォート・フィヨルトを名乗る道。どちらにも備えてくださいまし!」


「はっ!!」


「その未来がある程度確定し、わたくしが表に出るまで、もしくはその必要があると判断されるまで、フミネの存在は秘匿されることでしょう。それがあなた方へのお願いですわ」


 皆の目線がわたしを向く。ビビってられるか。見つめ返す。


「わたくしも、フミネも、そして今、ファインもフォルンも強くなろうと努力しています。貴方がたにも稼業があるでしょう。ですがお願いいたしますわ。あなたがたもこれまで以上に強くなってくださいまし! これは強制ではありませんわ、同胞としての願いですわ!」


「……、くくく、ははははは。自分は軍属ですので、いくらでも努力できますが、例えば、コボル、お前はどうなんだ?」


 コボルと呼ばれた青年が悔しそうに、だけど、高らかに返答する。


「舐めるな。俺はフィヨルタ最強の靴屋だぞ。なあ、アレッタ!」


「まったくだ。わたしは伝説の宿屋の娘だよ。なんならフサフキの名を貰ってみせるさ!」


 10代後半の男女が熱く答える。そして、その場の全員が口々にわめきたてる。全てはポジティブだ。


「あなたがたの気持ちをありがたく思いますわ。全ては月が満ちる時に!」


「月が満ちる時に!!」



 フミネがなんだかよく分からない内に、良い話は終わっていたようだ。



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