表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/41

日向を歩くのは難しい

 今日は日曜日の朝9時の駅前。天気は晴れ。

 絶好のお出かけ日和。


 なんとなんと、りかさんと二人で映画を見るためにお出かけです。


 りかさんに誘われました。


 楽しみです。わくわくです。


 今日は気合いを入れて白いTシャツに薄い黄色のカーディガン、花柄のスカートです。スカートは17年経ちましたが、まだ下がスースーして慣れません。


 なので、スパッツを下に穿いています。


 このコーディネートは茜によって行われています。気合いは妹によっていれられます。私は出かける前日の夜に、明日、誰とどこに出かけると茜に言ったら、起きたら用意してくれています。


 できた妹です。

 茜が用意しなかったら、Tシャツにジーパンという前世から変わらないコーディネートになります。そして茜に怒られて結局茜が用意することになります。



 流石に、この私でもジャージで外に出ようとは思いません。


 すいません。全国のファンの皆様、申し訳ありません。


 化粧はどうしたって?

 勿論してないです!


 化粧は茜にお姉ちゃんは素のままの方がいいと言われており、後、面倒なんでしていません。その代わり、お肌のスキンケアーは面倒ですが丁寧にやってます。


 一応、女子ですし。


 少し人の流れをボーッと見ながら待っているとスーツ姿の女性が小走りにこちらに向かってきます。


 ぴしっとしたパンツスタイルのスーツで、できるOL感が凄い出ています。顔も美人で、りかさん!!


「ごめんね、ゆか氏、少し遅れてしまって」

 申し訳無さそうにりかさんが頭をさげます。

 りかさんのところどころ跳ねた髪がそれによって、広がります。


「大丈夫ですよ。それより、りかさん、夜勤あったんですか?すいません、この日に予定入れてしまって」

 りかさんの目元には大きなくまができて、目も半開きになっています。


「えっ、違いますよ。ゆか氏、すいません。今日の朝までオンラインゲームのイベントがあってそれでらあんまり寝てないんです」


「眠そうなのは分かりましたが、なんで、スーツなんですか?」

 もしかしたら、私に向かって格好つけたかったからですかね。


 けど、身だしなみ整えて無いんでそれは違いますか。少し、残念です。


 だけど、なんかデートみたいですね。デートで男性がスーツ安定って言いますけど、女性のスーツもそそるものがあります。


「すいません。表社会に出るための服がこれしかなくて」

 表社会って何に!

 いつも生活しているのは表社会じゃないの!?


 そういえば、りかさんの私服って何時もキャラもののT-shirtでしたね。

 恥ずかしいという感情あったんですか!?


 当たり前のようにキャラものT-shirt着て、電車乗ったりとかしていたんで普段着なのかなと思っていました。


「ゆか氏がおしゃれしてきてるのに私がスーツなんて、なんかすいません。

 ………いや、冴えないOLと美少女JKの歳の差カップルの百合もの、なんかいいぞ。冴えないOLが健気な美少女JKに介抱される。これはそそるー!


 ゆか氏介抱してくださいー」


「全部聞こえてましたよね」

 りかさんと思考が似てるのなんか釈然としない。

 いや、私の思考の元はおっさんだから仕方ないか……


 ごめんなさい、りかさん。


「まあ、リア充の聖地、映画館に行きしょうか!」

「ゆか氏、置いてかないでー」

 

 映画館、それはリア充一杯のリア充の聖地。

 右見ても、左見てもリア充で一杯の場所

 イチャイチャしながら、ポップコーンやジュースを貪ってる場所。

 そこの高校生カップル、そんなもの食べてると太って、ニキビ出るぞ。


 我々の精神を確実に絶え間なく削ってくる。

 私は人形、私は人形、心なんて無い。


 あっ、私達もはたからみたらカップルじゃないかな。うん。


 さあ、非リアども恐れおののけ!

 跪け!


「ゆか氏、世界を蔑むような凄い悪い顔してますぞ」

「そんなこと、ないですよ…」


 勿論、今日見る映画はカップル御用達の恋愛映画ではなく、りかさんが好きな女児向けアニメ映画です。

 りかさんって、そっちの方だったのですね。大きなお姉さんってやつです。胸の方は……

 凄い睨まれました。


「では、いざ戦場に参りましょう!」

「おー」

 入場管理しているお姉さんに驚かれながら、わくわくして、行動が完全に小さい子のりかさんの後についてシアタールームの中にはいる。


 そこは、カップルという名のリア充はおらず、小さな女の子が一杯であり少し心が浄化されていきます。


「あー、癒されます。天国です」

 りかさんは立ち止まり、しみじみと呟きます。


 えっ、りかさん、確かに小さい子見ると癒されますけど、えっ、もしかしてこれが目的!?

 りかさんとの付き合い方を少し考えた方がいいかもしれません。


 席はスクリーンのど真ん中。この小さい子一杯の状況をみたら大人げ無いですが、ネット予約でいい席を確保してあります。


 隣は小さな女の子3人組で、親御さんは居ません。

 外で待っているのかな?


 昔、デパートの映画館で茜と私だけで映画を見て、両親は買い物に行ったりしていたので、それみたいなものかな?


 小さい頃は映画館で映画をみると良く寝ちゃっていました。おっさんだからかな。


 その後、茜が両親に一生懸命映画の内容を説明するんですが、それがまあ、可愛くて、可愛くて。映画は内容よりもそれが楽しみでした。


 そんな映画の後の楽しみが無い今日は起きて見ることにしましょう。


「あっ、みいちゃんだ」

 私の隣にいる子達が私に向かって叫びます。

 その声につられたのか、周りの女児がこちらを見て、次々にみいちゃん、みいちゃんと言います。


  一部から低い声で聞こえますが無視です。

 やはり、大きなお兄さん、お前らもいたか。


「お姉ちゃん、マジカルサンシャインやって、マジカルサンシャイン」

 隣の小さな女の子達が期待するような声で言います。止めてくださる親御さんはいないのでどうしたら良いんですかね?


 りかさんに助けを求める視線を向けると、ご丁寧にスマホでマジカルサンシャインの動画を再生しながら期待するような目で見てきます。


 知っていないと分かっていて、動画を見せてくれる相手を思いやる気持ちをもうちょっと別の事に使って欲しかったです。


 別の映画の宣伝が始まり、もうすぐ、映画が始まりそうです。

 さすがにこんなに小さい子から期待した目を向けられたら断れないです。

 映画の終わった後にやってあげましょう。


「映画、静かに見れたらやってあげる」

「「「うーん」」」

 えっ、できないの!?

 小さな女の子達には難しいのかな?

 てか、りかさんはなんで頷いていないのですか!

 大人が手本見せないと!


「じゃあ、映画をお行儀よく見れたら、やってあげる」

「「「うん! 」」」

 小さな女の子達が嬉しそうに頷き、姿勢をただす。りかさんから聞こえてくる声は無視です。

 

 映画のオープニングが始まる始まる。

 少し煩かった映画館は静かになった。

 隣の小さな女の子達も目を輝かせながら食い入るように画面を見つめる。


 映画は基本的には日曜日の朝にやっているものの拡大版です。

 敵が出て来て、仲間と力をあわせて困難に立ち向かっていく感じです。



 単純な構成ですがそれゆえに面白く。

 いつの間にか時間的にラスボスとのバトルです。


 主人公達がバタバタと怪人に倒されていきます。

 この怪人が最初に出て来てたら良かったという話は聞きません。組織はボスが倒されたら終わりなのですからね。


 いつの間にか、主人公達全員が倒されてしまっています。

 絶体絶命のピンチです。


 マスコットみたいなキャラクター画面の大部分を占めます。


 そこら辺でやっている、ヒーローものの劇みたいなことを言いだしました。


「みんなー、応援してあげてーー!」

「いくよー」

「「「頑張れー」」」

 これがあったから静かに出来ないのか。

 幼い子達の可愛らしい声に紛れて映画館の隅々から野太い声が聞こえてきています。低音キャンセラーとかないかな。


「もっとー」

「「「頑張れー」」」

 これって、ちゃんと音量測っているのか凄い疑問になります。


 勿論、最後は主人公達が応援によりなぜか復活して、みんなの力を合わせて敵を倒してハッピーエンドになりました。小さい子むけの良くある終わりかたです。


 なぜか、隣のりかさん改め大きなお姉さんは号泣しています。泣くようなアニメでした?


 逆方向見ると、小さな女の子達がきらきらとした視線を向けてくる。

 映画じゃあ、満足できなかったのかな!?


 良い感じになって、小さな女の子達との約束を完全に忘れていました。


 りかさん。なぜあなたはさっきまで号泣していたのに何故か笑顔でこちらに目線を向けてくるのですか?

 そのまま、泣いていてください。


 幼児むけ映画のためか、みんなエンディングの途中で席を立っているのでシアタールーム内に人はあまり残っていません。


 しょうがないか。

 小さな女の子との約束を破るのも悪いですし。


「お姉さん、これ使って」

 一人の女の子が完全な善意で映画の中で、みぃちゃんが使っていたステッキを貸してくれます。


 うっ、更に恥ずかしくなった。

 えー、なるがままよ。


「みぃ、行くよー。みぃ、みぃ、パワー注入ー」

 無茶苦茶、恥ずかしい。


 映画館に残っている人全員がこちらに目を向けてきます。

 今すぐ、脱兎の如く、このシアタールームから逃げだしたいです。


 ダンボールに隠れるのも可なんでダンボールください。


「「「お姉ちゃん、凄い。みぃちゃんだ、みいちゃんだ!!」」」

  みいちゃんは画面の中にしかいないからね。

 今、あなた達がみてるのは藤原ゆかっていう女の子だよー。


「ゆか氏」

 りかさん、なんでまた、感極まって泣いてるの。

 そして、抱きついてくるの?


 帰ろう。もう、この場所に居たくない。


「みいちゃんばいばいー」

「「ばいばーい」」

  泣きっぱなしのりかさんを引きずって、映画館から出て、近くのちょっとおしゃれな喫茶店に入り通路の中間くらいでカウンターが目と鼻の先にある椅子の席に座ります。


「精神的に疲れました」

「ゆか氏、ありがとうございます」

 りかさんは無茶苦茶ほくほく顔です。

 いつの間にか、目のくまも無くなってますし。


「ご注文はどうしますか?」

 可愛いらしい制服を着たウェイトレスさんがおしぼりと水を持ってきてくれる。


「じゃあ、ブレンドコーヒーとチョコケーキで」

「えっ、高い」

 りかさんが小声でいう。

 ウェイトレスさんが顔色を変えずニコニコしている。


「あ、あ、じゃあこのアイスコーヒーで」

「ご注文は以上でございますか?」

「はい!」


 りかさんは目に見えるほど沈んでいる。

 先ほどまでの嬉しそうな顔はどことやらです。

 りかさんって喫茶店来ないんですかね、価格帯はちょっぴり高いくらいでしたが高すぎるということは無いとおもいますが。


「りかさん」

「そうだ、ゆか氏、みいちゃんのコスプレしませんか?」

 りかさんの顔がさっきまでのはなんだったのかというくらい変わっています。



「しません!」


 心配したのが損です。

 私の脳を動かした分の糖分をください。


「殺生な~、ちょっぴり、ちょっぴりでいいですから」

 ちょっぴりのコスプレって何ですか?

 服をちょっとだけ着る感じですか?ただの変態じゃないですか?


「嫌です!」

「うーー」

 なんで、そんなに目をうるうるさせているんですかね。そんな目をしても着ないですよ。


 まあ、朝、茜がコスプレの服を用意してたら何も考えずに着るとおもいますが。


 たまに外に出ないときに、妹がかなさんみたいなロリータ系の服を着せてきます。そういう時は、茜もロリータ系の服を着て双子コーデぽいことをしています。


 とりあえず、押しきられたくないので話を変えましょう。


「りかさん、映画面白かったですね。特にあの、主人公のりっちゃんが活躍するところ」

「そうです、りっちゃんの活躍するところは、ずばんざばんばーばんって感じで良かったですね。特にあの………」


 オタクはとりあえず、自分の好きなことを話題に喋れば勝手に喋ってくれます。楽です。


 りかさんが意味のわからない擬音語を使いながら喋る、喋る。


 私はとりあえず、りかさんの顔を愛でながら、適当に相づちをうちます。

 いくら見てても飽きません。

 美人は正義なのです。


 りかさんは、飲み物が来ても飲まずに延々とさっき見た女児アニメの話しをしています。とっくに映画の話は終わり、原作の話に変わっています。


 映画の話題が終わったあたりからはもうなに言ってるのかわかりません。今は次はどの話をするのだろうかを楽しみにして相づちをうってます。


 これぞ、オタク×女子。話の長さの階乗です。


 いきなり私とりかさん、それぞれの隣の席にちゃらいイケメン男が座ります。


「りかさん、そろそろ行きましょ」

 りかさんのアイスコーヒーは一口も飲まれていません。


 もったいないですけど、こういう男とはさっさと離れた方が良いです。


「あ、うん」

 りかさんは話に夢中で、男に気づいていなかったらしく肩を縮める。

 レシートを持って立ち上がる。


 私の手首を掴まれる。


「離してください」

 手首に触れられると本当に気持ち悪いので止めて欲しいです。


「君達オタクでしょ、知ってる知ってる、ダブルピースとかでしょ。俺たちが会計払うから話そうぜ」

「ちげえよ、それ、色々やばいやつだよー」

 男達が品の無い笑い声をあげる。


 私は手を振って、掴んだ手首から逃れようとする。


「ちょっと、くらい良いじゃん。5分でも良いからさ」

 男の顔はニタニタと笑みを浮かべている。気持ち悪い、吐き気がする。


 元男だけど。


「きゃあ、変態、助けて!」

 私は悲鳴をあげる。


 店内の視線が集中する。


「おいおい、まて、まて」

 男は直ぐに反論の声を上げようとするが勿論言わせない。


 最初に言った方が強いのだ。


「襲われるー!助けて」


 男は私の手を引っ張り口を閉じようとするが、それを見て女性が襲われていないと思わない人なんていない。一番の悪手である。


 もしこれで助けてくれなかったら、家に引きこもります。


 周りの人が色めき立って席を立つ。

 それを見た男達は形勢が不利だとみたか、逃げだす。


「りかさん大丈夫ですか」

 何故か、りかさんは床に座り込んでいたので、立ち上がらせてあげる。


「大丈夫だよ、ゆか氏凄いですね。表社会は怖いです」

 ゆかさんくらいの美人さんだったらこういう経験ちょくちょくあると思うんですけど。



「ちょうど、良いですし、アイスコーヒー飲んだら帰りますか」

「ですね」


 りかさんはアイスコーヒーをがぶ飲みして空にしてしまう。


「ごめん。ゆか氏、腰が抜けて歩けない」

 この後、りかさんを家まで送って帰ったら、何故か妹に凄く心配されました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ