私の日常
ドルオタと訊かれたらあなたはどんな人を浮かべますか?
普通の人、太った人、影のうすい人、ちゃらい人。
実際、ドルオタには色々なタイプの人がいます。
オタク活動にどっぷり浸かった人と浸かっていない人ではオタクといっても全然違います。
前世はオタクといっても、ちょっと人よりアイドルを知ってるだけのファッションオタクでした。
ですが、今世では違います。
どっぷりとオタク活動に使っているからです。
例えば、朝の目覚ましは……
「起きてー」
ドアが声の大きさとは似合わずにゆっくりと開きます。
そして足音が静かに近づいてきた後、私の布団がなすすべもなく剥ぎ取られてしまいます。
寒い。眠い。お布団。
私は布団を探して手足を動かします。
「お姉ちゃん、朝だよ。ご飯出来たよー。起きて」
妹の茜は私の耳元で囁きながら、私のスマホを手に取り、パスワード教えていないのに当たり前のようにロックを解除して、ひなこたんファン御用達のひなこたんのおはようボイスアラームを消します。
今日も聞けなかったです。悲しい。
茜が来る前に目覚ましをかければ聴けますが、朝の一分一秒たりとも睡眠時間を削れないので無理です。
私がそんなたわいもないことを考えている間に茜は私のパジャマを脱がして、高校の制服を着せてくれます。私はされるがままです。
小さい頃は、私が茜の世話をしていましたが、いつの間にか立場が逆転してしまいました。
あんなにお姉ちゃん、お姉ちゃんって頼ってきた可愛い妹は、いつの間にかお姉ちゃん、お姉ちゃんって私の身の回りの世話をしてくれます。
あれ?
……
別にそれでも良いかもしれません?
綺麗に髪型まで整えられて、茜に手を引かれながら階段をおりてリビングに向かいます。
リビングにはお父さんとお母さんがすでに座っており、ご飯、味噌汁、サラダという妹が作った我が家の一般的な朝食が並んでいます。何もなければうちでは家族全員で朝食を食べます。
茜が思春期に入っでお父さんを邪険にしはじめても、朝食はこのとおり全員で食べています。
定番の"父親のものと一緒に洗わないで"は、茜が洗濯を行っているため私のと一緒に勝手に別けられていました。
私の前世は36歳だったんですけど、一緒に洗って大丈夫なのですかね。
「「「「いたたぎます」」」」
食事前の挨拶はしっかりとします。
「味噌汁美味しいぞ。茜」
「……」
最近、茜はお父さんの言葉は基本無視しています。
沈黙が辛い。
母親は我関せずといった感じで美味しそうに朝食を食べています。この両親は基本的にラブラブなのですが、茜が父親を邪険に扱っていることにはなにも言わないです。
「美味しい朝ごはん、いつもありがとうね茜」
「お姉ちゃんが美味しく食べてくれて嬉しいな」
この、対応の差。
やっぱり、茜はお姉ちゃん子ですね。嬉しいです。
父親がこちらをすがるような目でこちらを見てきます。そんな目をされても困ります。お姉ちゃん子なので諦めてださい。後、お父さんはいつも通りあんまり長く私を見ない方が良いですよ。
「お父さん。お姉ちゃんをいやらしい目で見ないで」
ほら、言わんこっちゃない。
父親は捨てられた犬のような目をします。
お母さんもばりばり働いているので父親の収入が無くても大丈夫なのですが、お金を家庭に入れているのにこの扱いは可哀想そうです。
夜はお母さんといちゃいちゃしているので大丈夫でしょう。このリア充が。
食べ終わって、食器を私とお母さんが片付けます。
茜はその間に登校して行きます。
私は茜と同じ高校に通っているのですけど、一緒に登校しないのは、茜は朝に生徒会の仕事を行うために朝早く登校しているのです。
私はソファーの上で軽く睡眠をとります。
布団の中で寝たいのですが、制服に着替えてしまっているのでしぶしぶソファーの上で寝ています。
そしてまたここでひなこたんのおはようボイスが聞こえる……
ピンポーン、ピンポーン
友達のわかばちゃんが来たようです。
私は起きて、嫌々アラームを消します。
アラームを早くかけない理由は前述の通りです。
「…ゆかちゃん、…おはよう…」
玄関を開けると、そこには小柄で守ってあげたくなるような美少女が立っています。
平石わかばちゃんです。
小学校からの親友で現役地下アイドルをやっています。
「おはよう。行こうか」
わかばちゃんとたわいもない話をしながら学校へ向かいます。
学校は家から10駅離れた場所にあり、通学時間は約30分です。近いようで遠い距離です。
日本の首都東京にあるため通学電車は毎日満員です。わかばちゃんがサラリーマンの方々に潰されないように守ってあげないといけません。
「…ゆかちゃん、…小テストの英単語おぼえた…?」
「小テストあったけ!?」
英語の先生は小テストで悪い点をとった生徒には怒鳴り散らします。怒鳴り散らされたあかつきには耳がじんじんするようになるので絶対に怒られたくないです。
「どんな単語でるの?」
「grain,remain,submit…」
私は前世の記憶をたどって、英単語を思い出そうとします。
勿論、前世で英単語なんて殆ど使ったこと無かったので一つも思い出せません。
前世の記憶なんて、同じような生活レベルの社会では中学校くらいまでしか役にたちません。
十で神童十五で才子二十過ぎれば只の人ですね。
「着いたね」
そうこうしているうちに学校に着きます。
「じゃあ、今日も頑張っていきましょう」
「…うん…」