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森からの出迎え

周囲の森から人が男の方に向かって歩いてくる。徐々に近づいてくるその姿から女性であることが判る。やがて5mほどの距離で立ち止まるとこう言ったのだ。


「おはよう」

「おはよう、日本語が通じるのか?」


男は思わず応えてしまったが、見るからに日本人ではない。その姿も見慣れぬものであった。


「あなたはあちら側から落ちてきた日本人なのであろう?」


彼女はそう訪ねてきた。何故こちらの事が判るのか。明らかにここは日本ではないはずだ。ここに有る巨木も先程の大熊も見覚えがない。その言葉から察するにこちらの事情を知っているようだ。そう考えて男は答えた。


「たしかに日本人だ。それが何故判るのか教えて欲しいのだが」


彼女は頷くと続けた。


「来たのはあなたが初めてではないのだ。時々地球人がこちらに落ちてくる。最近は日本人ばかりらしいがな」


どうやらこの不可解な現象は初めての出来事ではないようである。頻繁に起こっているのか。これが神隠しの正体なのか。男は混乱しながらも必要な挨拶を忘れていることに気が付いた。


「聞きたいことは山ほど有るが、俺はアキラと言う。よろしく」

「ああ、自己紹介をしてなかったな。私はセレスだ。これからよろしく」


彼女は名乗ると頭を下げた。男は妙に日本人っぽい仕草に戸惑いつつも頭を下げたのだった。そして彼女はこう言った。


「昨日の夜明け前に虫食い穴が開いたとの連絡が有ったんだ。でもその直後に、数百年ぶりらしい魔穴からの魔素大噴出が起こり近寄ることが出来なかったのだ。遅くなったことを許してくれ」

「昨日?」


男がこちらに側に出てきたのは夜明け前だった。金色の光の噴出で一度気を失い、再び意識を取り戻したのは夜が明けた後だった。それが昨日の出来事ならば丸一日気を失っていた事になる。


「そうだ。虫食い穴の解放後には異物が残ることが多いからな。早く来たかったのだが魔素濃度が濃すぎて無理だったのだ」

「あれから一日経っているのか・・・」


男が途方に暮れて呆然としていると彼女が言った。


「この鬼熊はあなたが殺ったのか?一体どうしたらこんな状況になるんだ」

「鬼熊?突然現れ攻撃してきたので投げ飛ばした。それで死んだ様なのだが何が疑問なんだ?」


男は大熊のスピードに驚愕したが、頚椎が折れたのだから死んでいる。


「コイツは森の中では強者つわものでな、一人で倒す事など私では無理なんだよ。それにこの場所には近寄らないはずなのだが・・・」


熊が森の強者であるのはこちらでも同じらしい。では何故彼女は一人でやってきたのか。男はさらに困惑したが女が言った。


「聞きたいことが有ると思う。ただ私では説明が難しいのだ。主の所まで来ていただけないだろうか」

「判った。それでは君の上司のところまで案内してくれ」


そして二人は大樹を離れ、森の方に歩いて行く事となった。


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