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余裕(じゃない)の警備隊長

「…ってことで、今日の使命は終わりだな」


「うむ!次のお告げまで、存分に休むが良いよ!」


満足そうな彼女の顔を見届け、水晶での連絡を終える。


水晶の表面が揺らぎ、映像が消えた。


「…次のお告げね…」


召喚されてからというもの、毎日この水晶をつかって連絡が来る。


それは女神アデンからのお告げであり、自分がやるべきこと、使命が示される。


どこどこで盗賊が暴れているから退治しろ。


魔物が街を襲うから退治しろ。


など、毎日1つ以上の使命がある。


これをこなしてきたおかげで皇帝に召しかかえられて今に至るのだ。


普通であれば無理に近い使命も与えられた能力のおかげで非常に楽に解決できる。


非常にイージーなゲームの様なものだ。


だかイージーであるぶん、やり甲斐も薄い。


「なんだかなぁ…」


自分でも、全く贅沢な悩みだとは思うが…。


「失礼します」


扉をノックし、声をかける者がいる。


声からして、ユリファだろう。


「どうした、ユリファ」


「恐れ入ります、テンドウ様」


可憐な少女が部屋に入ってきた。


このユリファという少女は盗賊に襲われていた街の自警団の長だった少女だ。


可憐な見た目だがナイフの使い手であり、並の男なら秒で三枚におろされてしまう。


その二刀流はさながら天女の舞のように美しく、流麗。


青い長髪と瞳。小柄で華奢な体つきも相まって、”妖精(フェアリー)”の異名を持っている。


「おいおい、畏まったのは勘弁してくれよ」


彼女は最初の使命で知り合った。


いくら二刀流の達人といえど、多勢に無勢。


盗賊の集団に打ち負け、乱暴されそうになっていた所を助けたのだ。


「…そんなこと言ったって、扉の前には衛兵が居るし、仕方ないじゃない」


彼女は可憐な見た目とは裏腹に非常に男勝りな性格だ。


まぁ、1人で屈強な男達を纏め上げて自警団の長を務めてきたのだ。


そうなるのも仕方ないだろう。


「で、何の用だい?」


「さっきの竜退治の話!」


なんだか少し不機嫌なようだ。


「あんたまた1人で急に城を空けるなんて!」


確かに先ほどの邪竜退治話には1人で行った。


というか、使命には余程の事がない限りは1人で行っている。


「それがどうかしたか?」


「どうかしたか?じゃないわよ‼︎」


何か怒らせるようなことをしただろうか…?


城を空けた時間は長くはなかった筈だが…。


「ほんっとあり得ない!1人であんな災害みたいな奴に挑むなんて!」


「いやぁ、たいした相手じゃなか」


「何言ってんのよ‼︎」


涙目で上目遣いに訴えてきた。


「…心配するじゃない…!」


「いやぁ、だからたいした」


「毎回毎回っ!馬鹿みたいに強大な相手に挑んで!それも1人で‼︎」


「な、泣くなよ…」


「あんたが…死んじゃったらどうじようがっで…」


「泣くなって…」


「ぐすっ…何も1人で行く事ないじゃない…私だって戦えるわよ!」


「いや、それは…」


確かに彼女の二刀流はサシなら上級の魔物だって倒せるだろう。


しかし使命の対象は彼女の言う通り災害クラスが殆どだ。


余りに荷が重すぎる。


後は1人の方が気楽にサクッと終わらせられる。


それに…。


「…闘いに君を連れて行けば、君を失うかもしれない。それは嫌なんだ」


これが一番だろう。


「ふぇ…」


涙ぐみながらこちらを伺うユリファ。


「本当は今だって城の警備隊長をやって欲しくは無いんだ」


「ど、どういう…!」


「君は女の子なんだ、危険な仕事をさせたくは無い」


「ふぇっ!」


顔を真っ赤にするユリファ。


「…でも、君が最も警備隊長に相応しい技量を持っている」


それは事実だ。


「信頼してるよ。でも、城の警備隊長を前線に引っ張る訳にはいかないだろう?」


「それは…そうだけど…」


「それに、信頼無いのは俺の方だ。あのぐらいの竜に、俺が簡単にやられるとでも?」


不敵に微笑んでみる。


「うぅ…もう…」


顔を真っ赤にしながらユリファが俯く。


「…心配するなよ、ちゃんと帰ってくるからさ」


「…」


「お前も意外と心配性だからなぁ。可愛いヤツめ」


「なっ…!」


真っ赤な顔が更に赤くなった。


「わかったわよ‼︎もうっ‼︎」


勢いよく振り返り、扉まで馳けるユリファ。


「勝手に竜でもなんでも相手してれば良いんだわ‼︎」


バンッ


ユリファは勢いよく出て行った。


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