余裕の異世界戦闘
そう。何もかもが余裕だった。
言うなれば最初からレベルMAX、HP、ATK無限のゲームみたいなものだ。
手元の水晶を持ち上げる。
水晶の表面に水紋が広がり、やがて女神を映し出した。
スヤスヤと眠っている。
「アデン様。起きてください」
「ふぁ?」
目を閉じたまま気の抜けた声を上げる女神アデン。
彼女が俺を召喚し、力を与えた女神だ。
更にはこの水晶も彼女から与えられた。
これがあれば場所、時間を問わずに彼女と連絡が取れる。
「んー…うぅん…」
「…アデン様!」
「ふぁい!」
今度はガバッと起き上がった。
「…なんだ、少年か…」
しかしまだ寝惚けているようだ。
「アデン様。カイドの国の邪竜5体、さっきちゃんと狩ってきたよ」
「おぉ!やったか!」
俺の報告に女神は一瞬で覚醒した。
「3分かからなかったよ…」
あまりにもあっけない邪竜との闘いを思い出す。
カイドの国に突如として現れ、国中を蹂躙しはじめた邪竜。
その咆哮は大地を震わせ建物を揺らし、間近で聴けば聴力を失いかねない。
その牙は金剛石さえ容易く砕き、傷つけるのはまず不可能。
その炎はあらゆる物を無に帰す。
そんな謳い文句に、流石に今回はヤバいんじゃないかと冷や汗をかいたが…。
闘ってみれば、なんてことはなかった。
咆哮は耳鳴りすら起きなかった。
牙は焼き菓子が如く容易く砕けた。
炎には暑さすら感じなかった。(衣服は全部燃えた)
あまりにも、あまりにも、あっけなかった。