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余裕の異世界生活
そんな訳で、俺こと天堂 優は異世界に勇者として召喚された訳だが…。
「…はぁ…」
今日も何度目かの深いため息をつく。
「…異世界、余裕過ぎるだろ…」
召喚されてから既に3週間程が経つ。
その間に、俺は大英雄と呼ばれるようになっていた。
手に入れた規格外の能力、限界外。
こいつのおかげで俺はあらゆる偉業を成し遂げた。
盗賊退治。魔物狩り。竜殺し。
果ては魔術によって顕現した邪神までもを、たいした苦労もなく葬った。
こうして積み上げていった武功が評価され、今や帝国随一の武将だ。
大英雄テンドウの名前を知らない者は大陸のどこにもいないだろう。
そうして俺は最高の栄誉、莫大な富、圧倒的な権力を手に入れた。
最高の人生…の筈だ。なのに…。
「なんでこんなに退屈なんだ?」
玉座にもたれ、足を組みながらそんなことを呟く。
いや、原因は分かってる。
全てが、余裕過ぎたのだ。