表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

プロローグじみたエピローグ。

全作までで、すでに自己完結している方は読まない方がいいです。


どうしてもあの後どうなったか気になる方だけどうぞ。


あと、

心理描写がめちゃめちゃ多いです。



とあるところにそれはそれは仲の良い、

とても可愛らしい双子の姉妹がおりました。


姉はいつも無表情なので、

怒っているのかと勘違いされることが度々ありました。

でも、本当は恥ずかしがり屋で気の優しい女の子でした。


妹は姉とは違っていつも笑っておりました。

ですから、妹の周りにはいつも人の笑顔が耐えませんでした。

しかし、妹にとって一番大切なものは姉の笑顔でした。

姉のわかりにくい表情の変化を理解できるのは、

妹だけでした。


ふたりにとって、お互いが唯一無二の存在で、

ふたり揃っていることが何よりもの幸せでした。


姉は妹が悪い人にひどい目に遭わされないように目を光らせていましたし、妹は姉が悪い男に騙されないように目を光らせていました。




しかし、おとなになるにつれて、

その関係は変化していきました。


姉にとっての妹は、可愛くて守ってあげなければならないものでした。

もし誰か、自分よりも妹のことを思ってくれる男性(ひと)が現れたなら、少し寂しいけれど妹のことを任せようと思っていました。


けれども妹にとっての姉はそうではありませんでした。

妹は姉を一番愛しているのは自分だと確信しておりましたし、姉もそうに違いないと思っていました。


いつしか、妹は姉に絶対的な愛を求めるようになりました。


姉は妹の変化に気付きませんでした。


妹は姉のまわりから異性を徹底的に排除し始めました。


しかし、姉は気がつきませんでした。


妹は姉に異性の目が向かないように、自分を飾りたて始めました。


しかし、姉は気がつきませんでした。

それどころかますます異性から注目されることになった妹を必死で守ろうとしたのでした。


姉はやはり自分のことを一番大切に思ってくれている。妹はそう改めて思いました。

そして、こうして自分を守ろうとしている姉をさらに愛しく思いました。


妹にとって自分に群がってくる男たちは、姉の魅力を自分だけが知っていると実感するためのパラメーターのようなものでした。

彼らを見ていると、優越感に浸れるのでした。


しかし、同時に吐き気がしました。


姉のように魅力のある女性には見向きもせず、

自分のように何の価値もないものに跪き愛を囁く彼らを見ていると、自分たちを周りは表面上でしかとらえていないとわかったからでした。


しかし、姉を守るためにも。

わずかな優越感のためにも。

男を侍らせることはやめられませんでした。




そんな中、転機が訪れます。


ふたりだけの世界にいとも簡単に侵入してきた男が現れたのです。


男は家庭教師としてふたりの前に現れました。


優しく気さくな彼をふたりは明るく迎え入れました。

姉は自分にも妹にも平等に接してくれるこの男を、たいそう気に入りました。

妹は家庭教師が男であったことにはじめこそ不満を抱いていたものの、彼の人柄にふれて彼を認めはじめていました。


しかし、ある日を境に彼は妹に姉のことをしつこく聞いてくるようになりました。


趣味、誕生日、好きな食べ物。


妹は当然全部知っていましたが、分からないと言ってほとんどの質問に答えませんでした。


姉はそんなやりとりを見て羨ましく思っておりました。

やはり、彼には妹のような女性が合う。

心の中でそう呟いただけなのにひどく胸が苦しくなります。


それが恋愛感情と呼ばれるものだと分かっていましたが、分かっているからこそ自分の思いを押さえ込もうとしておりました。


妹は姉の変化に気づきました。


はじめは信じませんでした。

姉が自分以外に大切なものを作るなんてあり得ないと思っていたからです。


男の方を排除するのは簡単です。

妹はいつものようにとりまきの男たちに任せておけば、二度とふたりの目の前に姿を現すことはないと分かっていたからです。


さすがに殺されはしないでしょう。

厳重注意を受けるだけです。


ですが、今回はいつもと全く異なっておりました。


あろうことか姉もあの男も互いに惹かれ合っているのです。


男を排除すれば、姉が悲しむことが目に見えて分かりました。


どうすればいいだろう。

妹は、考えに考えて一つの方法を思いつきました。




姉が悲しむのが見たくないなら、感情を奪ってしまえばいいのだ、と。




感情がなければあの男に対する恋心も消え失せる。

そうして自分以外の誰にも目に触れさせないようにこの家で“保管”すればいい。





私だけのお姉ちゃん。






それはとても甘美な響きでした。


そう思うといてもたってもいられなくなりました。


妹は、まずネットでそのような薬の販売がされていないか調べてみました。


何件かヒットしました。


しかし、もしも失敗したときのことを考えると手が出せませんでした。


姉を殺したいわけではありません。

感情を、奪いたいだけなのです。


その香りも暖かさもそのままで、感情だけない状態にしたいのです。


そうしてついに洗脳という結論にたどり着きました。


洗脳についてネットで調べてみました。

巧みな話術で、正しいことと正しくないことをはっきりと何度も繰り返し、繰り返し伝える。

やってはいけないことをすると危害が及ぶという認識を植え付ける。

などなど。

どれも妹にとっては難しくなさそうに思えました。
















これだ。

これしかない。姉は私のものだ。



















































そうして、妹は計画を実行します。

もう少しで姉が手にはいると思うと期待に胸が躍りました。




いつもの食事に睡眠薬を入れる。

寝ている間に手枷と足枷をして二階のふたりの部屋に連れて行く。

あとは何度も何度も姉に言い聞かせるだけだ。









「お姉ちゃんには私がいればいい。」

「この部屋を出ようとしたらお姉ちゃんを殺して私も死ぬ。」

と。






これまでは全くなかったふたりの時間がたくさんできる。

一瞬たりとも離れたくない。

そうだ、たくさん話してあげよう。

昔の話をたくさん。

これからの話をたくさん。

















とあるところにそれはそれは仲の良い、

とても可愛らしい双子の姉妹がおりました。


妹は人形のように全く表情を変えなくなった蝋人形のような姉と、それはそれは幸せに暮らしたということです。










めでたし、めでたし。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ