一番近くて、一番遠い Ⅱ
ハァハァ…
息を切らしながらも走り続けた…―
ドンッ―
「おっと…」
「…すみません」
「俺こそごめんねー」
「じゃあ…」
「待って!」
「!?」
「泣いてる!?」
「なっ…泣いてません!」
「君、にりの彼女でしょ?」
「ちっ…違う!」
「…ごめん……」
「こっちこそすみません!じゃあ!」
「名前だけ教えて!俺は、一ノ瀬 かんた」
「青山いお。」
「ありがと」
今の私は、まだ、一ノ瀬君がどんな考えを持っているかは、
気付いてなかった。
「いお!」
「…」
にりが私を呼ぶ。
「まだ怒ってんの?」
「…」
「っ…」
私、何泣いてんだ…
「なんかあったのか!?」
「……んたのせいで…」
「あ?」
「あんたのせいで、こんな辛い想いしなきゃいけないんでしょう…うう…」
にりの大きな腕が私を優しく包み込む
「ごめんな…」
ガラガラッ…
「いおちゃ~ん!」
「!?」
「今日一緒に帰ろ~!」
にりの目をうかがう。
「…にり……」
「お前が誰と帰ろうが関係ねーし!」
「だよね… うん。一緒に帰ろ。」
「い~やった~!」
「じゃあ、にり。帰るね。」
「……」
「いおちゃん行こっ!」
「うん…」
一ノ瀬君が不敵な笑みを浮かべ、にりの方を見たのは私は、知らない。
グイッ!
「!?」
「いお!こいつは、俺からお前を奪おうとしてんだ!」
「一ノ瀬君が?あはは…有り得ないって…」
「お前バカか!?誰がお前なんか好き好んで近づいてくんだよ!」
ドクン…―
「…もう…これ以上私に構わないで!」
「いおちゃん?大丈夫?」
「一ノ瀬君…ありがと…」
「行こっか!」
「うん」
一ノ瀬君が悪い人には見えないよ…
「いおちゃん!俺!いおちゃんのこと好きなんだ!」
「え… でも、一ノ瀬君は優しくて頭も良くてルックスもいいって評判で、モテるのに…なんで私?」
「………」
「…ごめ…」
グイッ…
すごい力で私の肩に手を添えた…
「返事はまだいいから… じゃあ。」
一ノ瀬君が?私を?
おいしい話には裏があるとはこのことだったのだ…