32話「ちゃんとお見舞いに行きまする。」
あっさり警察に捕まってしまった、魔界の四大悪魔伯爵の3人だったが、魔王ピイチャン曰く、彼らの実力をもってすれば、出てくるのもあっさり簡単なのだとか。
小便金魚たちが警察から脱出してくる前に、何か作戦を立てなければならない勇者ミナミンたちなのであったが…?
母親「連中と私らの実力差は歴然としているからねぇ…。せめて相手の弱点でも判れば、対策も練れるんだけど…。」
魔王「あのぅ~…。その件について、俺に考えがあるんスけど…。」
女神「どんな考えなのですか?」
魔王「歩きながら説明するっスよ。まずは、病院に向かうっス。ライーミのお見舞いに行かなきゃならないっス。そろそろ面会時間過ぎるっス。」
母親「おや、本当だ!もうこんな時間じゃないか。ライーミさんに昨晩のことを、謝らなくちゃ!手土産の勇者まんじゅうは……ああ、あったあった。爆風で吹き飛ばされて、木の枝にひっかかっているよ。」
女神「(*´ω`*) おまんじゅう、吹き飛ばされたおかげで、かえって無傷みたいですね。良かったわ。病院に行くなら、お母様も治療してもらったほうがいいのでは?」
母親「私の治療は後回しでいいよ。アルテシアちゃんがかけてくれた治癒魔法のおかげで、ここまで治っていれば十分さ。唾でもつけて、一晩寝れば治るよ。先に全員でお見舞いに行くとしよう。」
勇者「え゛~~~!!やっぱしミイラじじいのお見舞い、行くのぉぉぉ???めんどくさ~。(ぶつぶつ)」
母親「やかましい!あんたもちゃんとおいでっ。さっ、行くよ、みんな!」
一同、急性アルコール中毒で入院しているはずの、ミイラじじいの病室に向かって歩き出す。
魔王「で、さっき言ってた俺の『考え』なんスけど…。他の悪魔伯爵の弱点やら、魔界の情勢やらは、ライーミに聞けば一番いいと思うんスよね。」
女神「ああ、なるほど!ミイラじじいさんも、四大悪魔伯爵ですから、内部事情には詳しいでしょうしね。」
勇者「ヽ(#゜Д゜)ノ 素直にピイチャンを痛めつけて、全部ゲロらせればいいと思いま~す!お見舞い、メンドクサイで~す!!(ガスッ)げふっ。(母ちゃんの肘鉄をくらう)」
魔王「ハハハハ、痛めつけても無駄っス★魔界の詳しい情勢とか、金ちゃんたちの弱点とか、俺、全然知らねっス!何てったって、引きこもりっスから!!」
勇者「ヽ(#゜Д゜)ノ┌┛ガッ?(ノ`Д´)ノ この役立たずめが!!痛めつけてやる!!(ガスガス)」
魔王「(ΩДΩ) ぎゃうううううう~っス!!!」
女神「所詮は痛めつけるんじゃないですか。ああ、もう!弱いものイジメはやめなさいってば、ミナミン!それでも勇者ですかっ!」
勇者「゛ヽ(#`Д´)っ 勇者が魔王殴って何が悪いんだよ!!」
母親「そういや魔王さん。気になっていたんだけど、独身バカ悪魔たちが『伯爵』ってことは、もっと上の上級貴族がいるんじゃないのかい?『公爵』とか、『侯爵』とかの方が、階級としては『伯爵』より上だろう。いくら引きこもりでも、それぐらいは知ってるだろ?」
女神「ガ━(゜Д゜;)━ ン !!! えええええ?小便金魚さんたちより、実力のある悪魔さんたちがもっといっぱいいるっていうことですか~っ?」
魔王「ああ、公爵侯爵は、今回無視しといていいっス。公爵家は魔王に一番近い親戚に与えられる爵位、つまりは俺の弟妹にあたる連中っスね。で、侯爵家ってのは、さらにもうひとつ離れた親戚、例えば叔父叔母とか、従兄弟とかがなるもんス。つまり、公爵侯爵は、実力には全く関係ないんスよ。ただし、伯爵以下、男爵子爵あたりは、こういう魔王の血族に関係ない連中が、実力や、実際にあげた功績でもぎとる一代限りの爵位なんス。その中でも最強四天王と呼ばれているのが、ショーベルキン、エガオン、ハルーナ、それから今から会いに行くライーミってわけなんス。」
勇者「何もしてないでも、魔王の親戚だったら、即貴族なのか。何ていい世界なんだ!誰か、お前の親戚の中で、婿養子募集している奴とかいねぇのっ?」
女神「ヽ(#゜Д゜)ノ 魔界の貴族に婿養子に入る勇者がどこにいるんですかッ!!」
勇者「つかさ~、小便金魚たち三人は判るけど、ミイラじじいはどうなの?よぼよぼじゃん。俺様でもアッサリ倒せそうだったぞ。」
魔王「ライーミは、先の500年前の大戦で功績を挙げて、それで爵位をもらったんスよ。一度爵位をもらったら、死ぬまでその身分は保障されるっス。ライーミは大戦後も、先代魔王、つまり俺の父ちゃんに徹底的に忠誠を誓ってくれて、魔界全体のために懸命に尽力したっス。国政を隠居した後も、俺の守役になって、色々と心配してくれてるっス。」
勇者「そうか……あんなよぼよぼじじいを守役にしたもんだから、こんなヘタレ魔王が出来上がったというわけだな。理解した!」
母親「つまり、ミイラじじいさんに聞けば、過去・現在・未来に至るまでの、魔界での出来事の全てが判るというわけだね?」
魔王「その通りっス。」
女神「なんか、昨日の飲み会の中でミイラじじいさん、先の大戦やら、魔界のあれやこれやの話をしていたような気がするんですが…。」
勇者「え~そうだったっけ~?酔っ払ってたから、全然覚えてね~よ!誰が聞くか、酔っ払いよぼよぼじじいのたわごとなんて。」
女神「( ̄ω ̄;) はい、正直、私も覚えておりません。覚えているのは、デザートを何にするかで揉めていたことだけです…。」
魔王「ライーミ、おしゃべり好きだし、何だかんだ言って俺に甘いんで、頼めば何度でも同じ話をすると思うっス。ちゅーか、頼まなくても、先の大戦の自慢話は延々としてるっスよ。」
母親「年寄りは昔の話をしたがるからねぇ。魔族だろうと人間だろうと、一緒だね。」
魔王「……あ、この病室みたいっスね。」
一同は、とある病室の前で立ち止まった。
4人相部屋とおぼしき病室の扉には、入室者の名前がプレートが掲げてあり、その中に『ライーミ様』という名前がある。
結局、当初の予定通りお見舞いにやってきた、勇者御一行。
ミイラじじいはどんな事実を知っているというのか?
これが、小便金魚、ゴンタ君、エガオンを倒す足がかりになるのかっ?
続くっ。