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一
『ソレ』は、画面に映し出される少女と娘の姿を見つめていた。
差し出された娘の手に、少女のそれが重なる。
やがて二人は姿を消した。
『ソレ』は、誰もいなくなった中庭の画像を見ながら、今後の「可能性」について考える。
これからの計画において、最も高い成功率を弾き出したのがあの娘だった。
無作為に抽出された三五二三人のうちの、一人。
娘の生い立ち、性格、これまでの行動――それらを全て計算し、導き出された成功率は五四パーセント。
この数字は決して高いとは言えない。二分の一よりは、少しマシな程度。
ほんの少し逆向きの風が吹けば、結果は翻ってしまう。
ゼロよりは、遥かに高い数値ではある。だが、まだこの数字に賭けるわけにはいかない。
残された時間は短く、あの娘が失敗すれば、後がない。
しかし、種を蒔き終えた『ソレ』にできる事は、後はもう、待つことだけだった。