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一
わたしの世界は、閉じられた一つの輪のようだ。
朝日が昇ると目を覚まし、朝食を摂り、祈り、夕食を摂り、日が沈むと眠る。
それだけを繰り返す。
何も変わらない毎日。
自分がいつからここにいるのかは、知らない。
いつまでここにいるのかも、知らない。
ただ、時は流れていく。
*
山が、蠢いている。
この国の象徴とも言えるその山は、外観上は悠然とし、左右対称な円錐形の姿はいつもと何ら変わらない。だが、遥かな地底から生じる微細な振動を感知した波形は、確かに明らかな動きを示していた。
いずれ起こると予測されていたその悲劇は、もう計算上のものではなく、計測されたものとなっていた。
国の各所に設置された監視装置からは、何も知らずに平和な日々を享受している人々の姿が送られていている。
彼らを護るのが、最後の主から託された使命。
『ソレ』は幾つかの計測値を確認し、より正確な発生時期を計算する。
遅くても三年――早ければ、あと一年。
かねてから組み立てていた計画を、いよいよ実行する時が訪れていた。