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それほど関係ないけれども生活保護受給者が車を所有していたので市役所に密告した男の話

作者: 山田 勝
掲載日:2026/07/01

 うちの会社は

 犯罪者はお務めが終わり元になれば・・・OKだ。

 夜逃げも大歓迎だ。


 令状がなければ引き渡さないのがうちの会社の売りだ。


 だがな・・・・



「現役はダメだ。こいつ、久保はクビにする」



 協力会社の社長が社員名簿を持って建屋に訪ねて来た。

 1人解雇にしたいとの相談だ。


 私はいちおうJVから派遣された社員だ。



 ここは山奥の工事現場。

 私は事務関係を担当していた。



 現役という言葉で思わずツバを飲んだ。

 犯罪者か?



 小さい声で尋ねた。



「指名手配犯ですか?」

「いや、違う。現職の公務員だ」


「はあ?」


 意味が分からない。


 現職の公務員がこんな山奥にまで働きに来ている・・・・



「復興作業で危険手当日当1万+最低賃金だな?」

「ええ、そうですよね」


「結構な額になる。公務員が仕事をさぼってバイト感覚で来た」


「どうして分かったのですか?」


「そりゃ、おめー、本人がそう言っていたからだ」

「はあ?」


 意味が分からなかった。


 何でも、公務員だが病気で休職中に小遣い稼ぎに来ているそうだ。

 それを昨日宿舎でベラベラ自慢をしたそうだ。



『うつ病で休んでも給料が出るんだぜ!』


 と共済組合疾病手当金申請書という名前の用紙をヒラヒラ見せながら自慢をしていたそうだ。


「こりゃ、確実に黒ですね・・・」


「手配師はネットで募集していた。全く最近の奴らは、目をみて雇えと言いたいよ!どーすんだよ。マスコミでも来られたらやっかいだ。痛い腹を探られるだろう。しかも、こいつを庇う理由はない」



「まだ、入場教育も終わっていないですよね」

「ああ」


 と言う事は給料発生していない。


 と言う事で、私は久保さんを呼び出した。

 やせた男で坊主だ。人は良さそうだ。



 西の方の自治体で、曰く付きの職種だ。無試験で採用しているが利権がからんでいるとの噂が絶えない。


 事務所にまで来てもらった。



「どうも、久保さん。確認したいことがあります」

「ほい、何でもどうぞ」


 名簿だと43歳か・・・嘘ではないだろう。



「あの久保さん。雇用保険これから加入します。初めての加入ですよね」

「おお、そうだよ」


「実は、確認しているのです。昔、公務員が共済保険加入のまま働きに来て、ちょっとした騒動になったのです」


 税務署は自動で計算をします。どこから給料を支給されたか把握しているのです。

 もし、公務員の給料とここの給料が重複していたら詐欺に問われる可能性が大です。

 久保さんの入った会社は税金払っています。



「公務員の方は長期休暇を取ってそれでバイト感覚で土木の作業員として働きにきたのですが、再来年ぐらいに税務署から追徴課税をされ、公務員を懲戒免職になったそうです」


「おお、それが・・・なにか?」


「雇用保険加入歴無しですから・・・もしかして、公務員の方が勘違いして働きに来たか確認していたのです。違ったらいいのです。では、この書類にサインをお願いします」

「・・・いや、いい。ちょっと用事を思い出した」


 久保さんはその日のうちにいなくなった。

 やっぱり黒だったのだろう。


 ちなみに、久保さんに話した内容はでっち上げだが、いずれ税務署にバレると思う・・・

 国は取る方が全自動で、支給する方は自己申告が常だ。




「しかし、社長、何で久保さんは宿舎で自慢したのでしょうね。バレるとは思わなかったのですか?」


「さあな。悪さを自慢したがる馬鹿はいるものだ。そういった輩は大抵間抜けだ。

 悪としても何も任されない」


「なるほど・・・バイトテロ事件みたいなものか・・・」


 後に寿司ペロ、醤油差しペロ事件で思い知った。

 世の中には犯罪を自慢したがる人種がいるのだ。






 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・







 とこの過去を思い出した。今、ここは義母の店の駐車場、義母は洋服直しの店を経営している。


 知り合いのおっさんが駐車場に車を止め自慢している。放浪の画家のような出で立ちだ。

 特徴的な話し方だ。



「ねっ、車買ったの。大丈夫、他人名義だから、これで親を病院に連れていってあげるねっ」



 良い車だ。ブラックの大きなバンだ。


 ワザワザ家まで自慢に来た。ご近所さんだ。


 義母は洋服のお直し屋をしているから無碍は出来ないので、



「素晴らしいですね。おいくらですか?」

「ねっ、ブローカーを通して500万円ね」

「素晴らしいですね。500万円以上しますよ」



 素晴らしいを連呼しながら、私は彼のナンバープレートを必死に暗記して。



 市役所に通報した。


 総合案内につながった。



「もしもし、告発したいのですが・・・」

「は、はい?ご用件は・・・」


「生活保護受給者が車に乗っています・・・住所とナンバーをいえます。私の名前と住所、職業全て言えます」

「分かりました。福祉課につなぎます・・・」




 名前を公表しても良かったが、市役所の方は匿名の申告で動いてもらったようだ。


 その後・・・そのおっさんは私に報告に来た・・・・・




「うん。ねっ、組長がねっ、チクリやがってねっ!娘名義にした財産調べられたねっ!車を売らなければいけなくなったねっ、また申請しなければいけないねっ!」



「はあ、大変ですね」

 やるじゃん。市役所の方・・・


 組長、ここら辺では自治会長の事をいい。年配者の間ではそれなりに敬意を払われる反面、いろいろ面倒な仕事と利権もからむ。

 自治会の管理する建物とか山もある。



 このおっさん。生活保護だから組長は「ちょっとな~、なら働けよ!」とツッコマレてなれなかったのだ。それを恨みに思っていた。


 勝手に現組長がやったと思っている。これは予想外だ。

 少し生まれつき知能が低いみたいだ。


 後で組長の家に事情説明と謝罪に行こう。



 これがベストではなくベターではあると思う。


最後までお読み頂き有難うございました。

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