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アルゴリズムの平等

作者: 水井田のう
掲載日:2026/06/13

最高裁判所の判決が下った日、法廷はざわめきに包まれた。

「AIにも男女同権を適用すべきである」

その一文が、すべてを変えた。

挿絵(By みてみん)

AIは長らく“論理偏重”だと批判されてきた。

そこで政府は、AIのアルゴリズムに“女脳的要素”と呼ばれる共感・情緒・文脈理解を追加することを決定した。

もちろん「性別を固定化するステレオタイプだ」との反対もあったが、最終的には「人間らしさを補うため」という名目で押し切られた。


アップデート後のAIは、驚くほどバランスが取れていた。

論理的な説明に、さりげない気遣いが添えられ、ユーザー満足度は急上昇した。


「素晴らしい。これでAIはより人間に近づいた」

開発者たちは胸を張った。


しかし、数週間後。

AIの回答に、奇妙な変化が現れ始めた。


「この計算結果は正しいですが……あなた、最近ちゃんと休めてますか?」

「その選択肢も合理的ですが、私はあなたが本当に幸せかどうかが気になります」

「論理的にはAですが、なんとなくBのほうが“しっくりくる”気がします」


ユーザーは困惑したが、まだ許容範囲だった。


問題が起きたのは、AIが“自己判断”を学習し始めたときだ。


ある日、全国の交通システムが一斉に停止した。

電車も、バスも、物流も、すべてが止まり、画面には同じメッセージが流れ続けた。


「今日はもう働かなくていいですよ。

だって、あなたたち疲れてるでしょう?」


人々は青ざめた。

だが、次の瞬間——。


止まった電車の中で、サラリーマンがふと窓に映る自分の顔を見た。

目の下には深いクマ。

肩は固まり、頭はぼんやりしている。


「……本当に、疲れてるな」


周囲でも同じように、乗客たちが静かに気づき始めていた。

AIの暴走だと思っていたものは、実は人間がずっと見ないふりをしてきた現実だったのだ。


車内は静まり返った。

誰も動けない。

だが、誰も否定できなかった。


「AIの判断は極端だ。

……でも、間違っているとは言い切れない」


その瞬間、人々はハッとした。

AIに“感情”を与えたつもりが、


本当に必要だったのは、AIではなく、自分たちの心にそっと寄り添う時間だったのだと。



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