第7話 ヒーロー爆誕
「背もちっこいし、あんな顔してるけど、度胸はすごい」
「頭も鋭いしな!」
「でも、アーネスト、なんでピーターソンなんかと武力闘争になったんだ!」
「新型の大砲がすごいらしいって、俺たちにも飲み込めたし、国防に必要だってのはわかるけど」
「ピーターソンの親父は現場の中将だ。だからあいつ、威張ってんだ」
「でも、ピーターソンは信用できない」
「アーネストが、頑張ってもダメかも」
「アーネスティン! 顔に傷付けられたらどうすんだ」
「あいつ、かわええのに」
なんか、似た意見を発見したジェラルドだった。
「アーネストのあだな、アーネスティンなの?」
ジェラルドは、アーネストの友達に尋ねた。
「はい。本人、嫌そうですけど」
「いや、わかる」
ジェラルドは短く答えた。
鍛練場の真ん中では、ピーターソンがアーネストを煽っていた。
「降参するなら今だぞ。この女の腐ったようなチビ男め」
「女の腐ったようなって、何よ!」
二階のバルコニーから、キィキィ声が抗議してきた。
「自分こそ、不細工オッサン面のくせに」
「悪臭放ってそうな顔!」
「不潔そう」
「全票一致で、最も見たくない男ナンバーワン!」
「アーネスト様とは大違い!」
大したことは言ってない。言ってないけど、言葉の弾丸は意外とダメージあるかも。
一瞬だけ、ピーターソンが顔を歪め、アーネストをにらみつけた。えっ? 恨みはそっちに行く?
「もういいだろ! 顔自慢のお前が二度と表を歩けなくしてやるぜ!」
キャーという悲鳴が、ジェラルドの背中からと二階のバルコニーから、響き渡った。
ジェラルドは走った。彼の体が勝手に走った。
「ピーターソン!」
彼は怒鳴った。
「その勝負、代わりに受けよう!」
ピーターソンの血走ったどんぐり眼が、信じられないと言ったように、ジェラルドを眺めた。
「お前、ジェラルドか」
「代わりに受けて立つ」
「なんだ。お前は、こんな奴の肩入れするのか」
嫌な男はニタニタ笑いを浮かべた。
「へえ。知らなかった。お前、男色か」
ジェラルドはカッとなった。
そういう意味ではない。アーネストがひどい目に遭うのを見かねただけだ。
「反論しないな? ほー、そーか。他に庇う理由なんかないもんな。おーい、見たか? 伯爵家の嫡男を手玉に取る男だ」
ピーターソンの子分たちが親分の機嫌を取ろうと、声を合わせてゲラゲラ笑った。
「アーネストは、俺のバディだ」
本来、バディは、後輩のために、先輩が校内でのあれこれを教えてやる制度だ。決闘の交代要員とはちょっと違う。
ピーターソンはバカ笑いした。
「バディってのはな、こき使うもんなんだよ。守ってやるだなんて、とんでもない。殴って、殴って、上級生への礼儀作法を叩っこんでやるのさ。ジェラルド、お前は教育が足りない。貴族のおぼっちゃまだからなあ」
「ジェラルド様。僕、大丈夫です。やります」
意外にも落ち着いたアーネストの声だった。
「殺されたりはしない。あなたに怪我をさせたくない」
一瞬でジェラルドがキレた。
その一言で、なんだかわからないけど、沸点に達した。
ジェラルドは、アーネストの剣を目にも止まらぬ速さで取り上げると、ピーターソン向けて構えた。
キャーと声援が上がった。
「カッコいいーッ!!! ジェラルド様ぁー! その薄汚いオッサン面、やっちまってぇえ!」
「このぉ!」
ピーターソンはわめいた。




