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【完結】愛しのバディ~本能は仕事してた  作者: buchi


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第6話 癒しの天使、決闘する

決闘は三日後だった。


アーネスト本人は気が付いていないらしかったが、女子成分が不足している男子校において、彼は(いや)しの天使と呼ばれていた。


それは完全に間違っている。ジェラルドに言わせれば、一体何言ってんだか、である。


やっていることを見ていればわかる。あんな女子成分がいてたまるか。


お茶を入れさせれば、濃すぎて真っ黒、掃除をさせれば途中で本に夢中になって掃除は忘却の彼方。朝食運びは、食器を木っ端みじんにするし、お菓子を見ても食べるわけではない。あまり興味はないらしい。

しかし数学に強かった。砦の強度計算や、大砲の飛距離の計算や効果的な配置についてなど、戦略的な問題について造詣(ぞうけい)が深かった。

戦闘論や武器の開発なんかやっているのは、騎士学校だけだ。実技がまるでダメでも、ヤツが騎士学校に引き寄せられたのは当然だった。


ヤツは実は有能だ。


彼は容姿が目立つので、見学日の女子にも人気があり、両性からモテると言う離れ業もやってのけていた。


だが、多分それが余計にピーターソンの(かん)(さわ)ったのだろう。


しかしながら、癒しの天使の決闘は学校を震撼(しんかん)させた。


「なぜ、あんな可憐な天使が決闘などを!」


意外にアーネストのファンが多かったことを、痛感させられたジェラルドだった。


「しかも、相手はピーターソンか」


ピーターソンの父は、軍の幹部だ。みんながそのことを知っている。ピーターソンは隠そうともしなかったからだ。

騎士団に入隊したかったら、あるいは出世したかったら、ピーターソンの父親は避けて通れない。

それを思うと、騎士団に入りたい生徒たちは、みんなピーターソンに逆らわなかった。


ピーターソンは卑怯だった。その事実を振りかざして横暴に振る舞う。彼は体が大きくて、その点でも有利だった。


「少々の怪我くらいは覚悟の上です。ここは学校です。大したことにはならない」


完全に冷静で、覚悟を決めたらしいアーネストは平然としていた。

ジェラルドの方が焦った。


「大したことになったら、どうすんだよ?」


意外なことにアーネストは剣の腕前は相当だった。だが、何分にもきゃしゃで非力なので、力で押し込まれたら絶対に不利だ。ピーターソンは卑怯な男だ。日ごろの恨みを晴らすためにどんな手でも使うだろう。ジェラルドは悩んだ。


決闘禁止令ってあったっけ? それとも、母にお願いして元帥から止めるようお願いするとか。

決闘禁止令は、そんな馬鹿な真似をする人間はさすがにいなかったので、校則になかった。




ヒヤヒヤしながら迎えた決闘当日。会場は例の鍛練場だった。



噂と言うものは恐ろしいもので、当日は見学日でもないのに、会場には平民女子がぎっしり詰めかけていた。


ぐるりのバルコニーには、平民女子が固唾を飲んで見守っている。多分、全員、金髪と紫がかった青い目のアーネストの味方なのでは? ピーターソンの変なコンプレックスを余計刺激するのではないかと、ジェラルドは不安になった。


見学日でもないのに、あいつら入っていいんだろうか。


「カネを門番につかませたらしいな」


誰かが言った。そんなことで見物が出来るのか? ジェラルドは混乱したが、この決闘の証人は、いた方がいいのかもしれない。


アーネストは鍛練場の真ん中で、静かに待っていた。


「おお。ビビッて逃げ出すとばかり思ってたぜ」


ニヤリと笑って、ピーターソンが反対側から入ってきた。

二、三人子分を連れてきていた。なんだかオラついた連中だ。こんな生徒、ウチの学校にいたっけ?

表向き、この決闘に関係ないジェラルドは、物陰から、アーネストを心配そうに眺めた。


「こいつら、立会人だ」


ピーターソンは、またもやニヤリと笑うと自分たちの子分を指した。


立会人って、そう言う存在じゃないはずだが。つまり、正式な決闘の場合、第三者を立ち会わせる。片方の知り合いは立会人になんかなれない。それに人数は一人と決まっている。


「お前は一人だよな。一対一って言ったもんな」


ジェラルドは胸がドキドキしてきた。これでは、ただのケンカじゃなかろうか。体育館の裏に呼び出したんじゃなくて、体育館の中に呼び出したわけだ。しかも多勢に無勢だ。


「一人だ」


アーネストが言った。


「ふん。気に入らなかったのさ。体力もなければ、努力もしない、腐ったような女男みたいなヤツが、裏口入学だか何だか知らないが、騎士学校に入学するだなんて、許せねえ」


「アーネストは、ああ見えて、めちゃくそ男らしいぞ!」


傍らで小さな声がした。

ビックリして振り返ると、数人の生徒が、やっぱり物陰に潜んで見物していた。


「あっ、すみません。僕ら、アーネストの友達です」


目をギラギラさせた、下級生たちが何人か集まっていた。











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