第4話 バディ失格
アーネストは、おっちょこちょいだった。
洗濯場に洗い物を持って行くよう頼んだのだが、彼はすぐに泣きながら走って帰ってきた。
「申し訳ございません! 申し訳ございません! 洗濯物を盗られました」
ついにバディを使える上級生になれて、ジェラルドは、優雅に本を読んでいた。しかし、アーネストの声にびっくりして飛び上がった。
「一体、誰に?」
誰が汚い洗濯物なんかを取る?
「平民のファン軍団にです」
「はあああ?」
一番嫌な連中に。なんて不甲斐ない。
ジェラルドはアーネストを睨みつけたが、アーネストはプルプル震えてジェラルドを見上げた。
え? なんかかわいい?
いや。こりゃダメだ。
仕方なく洗濯物を取り返しに出かけたが、ジェラルド様の香りをスーハーやっている連中を見ると、気持ち悪さが先だった。
「おい」
ジェラルドはアーネストに命じた。
「お前が取り返してこい」
意味もなく美しい金髪のアーネストが武者震いした。
「ハイッ」
何をやらせても一生懸命なアーネストは、平民女子団に体当たりをかました。
「あ、ちょっと、一応、相手は女子なんで……」
しかし、筋力に勝る平民女子はアーネストをはじき返した。
え? 男なのに? アーネストのあまりの弱さにジェラルドはおびえた。
「何よ、こいつ」
「弱っちいわね。よくこれでジェラルド様の身の回りのことなんかこなせるわね」
全くもっともだが、なんでこんなのがジェラルドのバディなんだろう。ジェラルドは情けなくなった。
仕方ない。ジェラルドは、物陰からぬっと姿を現した。
「俺の服を返せ」
「キャー!!! ジェラルド様ご本人ご降臨!」
嬌声と共に、大事な上着やズボンはポンポン投げ返されて戻ってきた。人のモノはもう少し大事に扱え! 靴下と下着が消えていたのは痛恨だったが、モノがモノなだけに公表しずらい。
アーネストは床の上にうずくまって、泣いていた。
仕方ないので、ジェラルドは洗濯物のほか、アーネストも背負って帰った。
「くやしー。私が背負われたいー」
やかましいわ。
アーネストに朝食を運ばせると、転んで食器を全部粉々にした上に、熱いお茶を浴びて軽いやけどを負ったため、ジェラルドが医務室まで連れて行くことになった。その後、壊れた食器の後片付けまでしなくてはならなかった。無茶苦茶に腹が立った。
「すみません! すみません!」
「もういいッ」
本気でダメな奴だったが、アーネストは勉強だけはやたらに出来た。特に、戦術論が抜群だった。剣術にも才はあったが、体力に大問題があった。
「アーネスト!」
ジェラルドは怒鳴った。
「ついて来い!」
鍛えればなんとかなる! 人間、根性だ!
「校庭を百周する!」
……などと言う鍛練は、アーネストには通用しなかった。
一周半で倒れた時は、あまりの不甲斐なさにジェラルドの方が倒れそうになった。
「お前は騎士には向いていない」
真顔でジェラルドは説教した。
しかし、アーネストは食い下がった。
「騎士様、かっこいいです。なりたいんです」
「いや、お前には、そうだな。宮廷の官吏勤めとか、貴族の家で執事をした方が向いてると思う」
「そんなチマチマした仕事、イヤです」
「ワガママゆーな」
ジェラルドは諭した。アーネストは、紫の目に涙を溜めて訴えた。しかし、コイツかわええ。
「頑張りたいんです。鍛えたい」
「方向性が間違っていると思うが……」
でも、アーネストは常に一生懸命で、学んで、少しずつ成長した。
身長も1センチ伸びた。
「すごいです!」
それはそれは誇らしげに、訴えてきた。同じ期間になぜか10センチ伸びてしまい、学内一の高身長になってしまったジェラルドは困った。
「身長だけは努力じゃないけどな」
ジェラルドは悩み始めた。アーネスト、かわええ。
ジェラルドも目立つが、アーネストは彼以上に注目されていた。主にダメな点で。学内では、成績も悪いうえに、雑用係としては完全に失格のアーノルドが、なぜ、あのジェラルド様のバディなのか、疑問の声が上がっていた。
伯爵家の御曹司にして、剣の達人、前途有望で女子にもモテるカッコいいジェラルド様にお仕えしたい下僕志願者は大勢いたのだ。
ジェラルド様のバディがなぜあいつ?
男子ばかりなのにも関わらず、渦巻く嫉妬……
「アーネスト君も学校に慣れたようだから、バディ変更する?」




