第3話 バディがつきました
平民女子は、ジェラルドの婚約を聞いて、かえって喜んでいるみたいだ。
一方で、貴族の令嬢方は明らかに温度が下がっていた。ないしは、別の方向を向いていた
「貴族の令嬢が減っただけよかったな、ジェラルド」
ケビンが慰めてくれた。
「そうだ。それに今日からは、遂に俺たちにもバディが付くし」
「そうだな。これまでは下級生バディだったけど、俺たちも上級生か」
ジェラルドも、ちょっと盛り上がった。
バディ。それは上級生が下級生に学校のいろいろを教えてやり、代わりに下級生は上級生の雑用をこなす制度だ。
ジェラルドの上級生バディは今年卒業した。
彼は大男で武芸の腕前も相当な上、粗暴で下級生バディをこき使ってやろうと待ち構えていたらしい。
しかし、残念なことに、ジェラルドは貴族の御曹司な上、武芸の腕前が上級生バディ様を上回っていた。
いびることは事実上不可能だった。
多分、学校側も下級生いじめの発生を懸念したのだろう。ジェラルドは虐められて黙っていそうになかったし、伯爵夫人が最初の日、わざわざ学校までやってきて、猫なで声で、ジェラルドのバディに声をかけた。
「色々教えてくださるのよね。優しくしてあげてね。ジェラルドから手紙で報告を受けることになってますのよ? いろいろ聞くのは私も楽しみ。ジェラルドの父は陸軍元帥とチェス仲間なの。あ、元帥は騎士学校の名誉会長も兼任しているのよ?」
母よ。それではまるで脅迫だ。
それでも、バディが上級生の部屋の掃除をしたり洗濯物を持って行ったりするのは仕事である。ジェラルドは黙々とそつなくこなした。ケチの付けようがなかった。
もう少し、やり方にアラがあったら、難癖をつけられたと思うのだが、ジェラルドという男は、要領がよかった。
今年からは、下級生枠から解放されて、ジェラルドたちにも、バディが付く。
ちょっと子分が付くような気分だ。
「ジェラルド。お前のバディは、この生徒だ。アーネストという」
「へ……」
意外な生徒を紹介されてジェラルドは目を見張った。
アーネストは、目立ってかわいらしい、背の低い子どもだった。目は珍しい紫がかった青で、髪は純粋な金色、ほっぺたはピンクである。
それが直立不動の姿勢で、出来るだけ大声で叫んだ。
「ジェラルド様ですね? アーネストと申します。よろしくお願いいたします!」
この声を聞いた途端、ジェラルドはなぜ、この子が自分に付けられたのかを理解した。
バディ制度は問題が多い。主に上級生が下級生を虐めるからだ。
アーネストは、絶対にいじめられそうなタイプである。
「俺って、もしかして緩衝材なの?」
ジェラルドは、使えなさそうなアーネストを関心のなさそうな目つきで眺めた。
「一生懸命頑張ります!」
一生懸命なことはわかった。
「うん……よろしく」




