第24話 その後
ダンスパーティは終わった。
ジェラルドにとってはすごく嬉しい夢のような時間だった。
社交界に出入りしたがる人間が多いのをなぜだと訝しがっていたけれど、これは納得だ。好きな女の子と踊れるだなんて、最高。
二階のバルコニーにたむろってた、いつもはムカつく平民娘どもも、今回ばかりは許してやる。
パーティ当日は鳴り物やウチワの持参は許されなかったらしく、静かだった。
ただ、ジェラルドたちのダンスが終わった時、静かに拍手してくれた。
祝福された気がして嬉しかった。
「彼女が婚約者だったの?」
パーティ翌日、早速ケビンがやってきた。
鼻の下が伸びるとはこのことか。勝手に口角が上がるのを隠すのに苦労した。
「うん。ダグラス公爵令嬢」
「すげーなー、お前」
何人か他の友達も寄ってきた。
「かわいいなー。美人だし」
「まあ、ピーターソンが目をつけるのも不思議じゃないよね」
「それで、お前が飛んでって飛び蹴りかましたと」
「ん? 何を大げさな。ちょっとどいてもらっただけさ」
「ピーターソン、骨折したらしいぜ」
「えっ? あんなんでか? ヤワだなー」
「猛烈に目立っていた自覚はあるのかね?」
「え? アーネスティン、かわいいからなー」
思わずジェラルドはデレた。
「いや、お前だ、お前」
「は?」
ケネスが指を一本たてて、左右に振りながら言った。
「ジェラルドは、ルイス王子を差し置いて、ダンスパーティイケメンコンテストNo.1の座を獲得しました」
「何のコンテスト?」
「女性なら誰でも投票できるイケメンコンテスト」
俺が? そこまでイケメンな自覚はないが?
「主要ポイントは、婚約者と話したがる男を……」
ピーターソンのことか?
「情け容赦なく、蹴り飛ばした点が、女子的にはカウントが高かった」
アランも参加してきた。目がおもしろそうにキラキラしている。
「それから、ピーターソンのことだが、突き飛ばされた拍子に、小指を骨折したらしい。でも、理由が理由なのでウケて、拍手喝采だった」
小指程度でよかった。でも、まずいかも。ピーターソンの親父は何か役職に就いてるらしかった。
「ピーターソンは、蹴られた側なのに、意外に平民女子に注目されてご機嫌らしい。気にしなくていいのでは」
世の中の反応に興味はなかった。
それより、それより!
ジェラルドはアーネストの部屋に急いだ。同じ授業を受けるはずなのに、やってこない。このままだと、遅刻だ。
「アーネスト!」
しかし、予想外なことにアーネストの部屋には、例の執事がいて、深々と頭を下げた。
「アッシュフォード様」
彼は言った。
「お久しぶりでございます」
「あっ? ああ、そうかな」
こないだドレスの件で会ったよね。
「実は、公爵様からお願いがございます」
なに? なんなの? ちょっと怖い。




