第19話 婚約者にドレスを贈ると
どうしてあんなことを言ってしまったのだろう。アーネストの重火器を採用する代わりに、身を売れだなんて。
自分の部屋に戻って、ジェラルドは頭をかきむしった。
あほちゃう?
でも、愛していますとか言ったら、アーネストにドン引きされそうな気がする。
それにアーネストが両親の公爵夫妻に、ジェラルドから身を売れとか言われたとバラしたら、もう、婚約破棄決定だと思う。
それでなくても、ジェラルドがアーネストベッタリなので、学園内では妙な噂が流れ、風紀の乱れを助長していると、舎監の教師は憤慨しているそうだ。教師の評価が下がるらしい。
逆に、例の平民女子軍団は盛り上がっていた。男同士の愛も、めっちゃいいんですと、花束と一緒に熱烈に励まされたジェラルドは複雑な顔をせざるを得なかった。
「顔さえよければ、すべては許されます」
こいつら、何を見ているんだろう。顔か。
一方で貴族の子女からは、白い目で見られるようになっていた。
彼女たちは、唯一騎士学校に出入りを許された見学日を有効活用して、学内で剣の練習を見物しているところだった。
下の修練場をアーネストが歩いている。それを見ていた彼女たちの話題は、自然、ジェラルドとアーネストの話になった。
「婚約者のダグラス家のご令嬢がお気の毒ですわ」
「なんでも、ご自宅に引きこもっておられるとか」
「それは仕方ございませんわ。誰だって、笑いものにはなりたくないと存じます」
いや、ダグラス公爵令嬢なら、今、あなたたちの目の前を通り過ぎていったよ。
「ところで恒例の競技会の時期が近づいてきましたわね」
「その後には、ダンスパーティがありますわよね」
ジェラルドはギクリとした。
ダンスパーティ?
彼は今、ちょうど令嬢たちには見えない、鍛錬場のバルコニーの真下部分にいた。彼女たちの話題は丸聞こえだ。
「婚約者のフレディから、ぜひとも参加して欲しいと手紙が来ましたの」
自慢そうだ。
「ドレスを贈ってくれるそうですのよ。婚約者特権ですわ」
ん? そのような特権、あったのか?
「ジェラルド様はどうされるのかしら? フレディは今からもうドレスを贈ってきたんですのよ」
「ドレスが贈られてきたら、絶対ダンスパーティにでなくてはなりませんものね」
「ですわよねー」
ジェラルドはひらめいた。
アーネストにドレスを贈ったら、着てくれる。
ダンスの相手をしてくれる。
アーネストは断れない。なぜなら、婚約者だからだ。
婚約者特権万歳。
ジェラルドはドレス屋へ突進した。




