第18話 俺に身を売れ
絶対に断られそうだったが、ジェラルドはアーネストをデートに誘ってみた。
しかし意外なくらいホイホイ乗ってきた。
「外に出られなくて困っていたんだ」
「は?」
「ピーターソン一味が、何かあると石を投げて来たりして……」
ジェラルドは頭に血が上ってきた。
「女性にすることではない」
「女性ではないと思っているからでしょう。気にしないようにしてます」
「気にしろよ。危険だろ」
「私と一緒だと、色々と面倒に巻き込まれると思うので平民の友達に頼むのは差し控えています。だけど、ジェラルドは伯爵家の御曹司だから大丈夫」
そこは学内一の剣術の達人だからと言ってほしかった。
「あの、アーネスト。君は公爵家の一員だよね?」
「ピーターソンは知りませんからね」
「いっそ教えてやったらどうなんだ」
「あまり、メリットがない気がしますけど」
「ダグラス公爵家に遠慮すると思うが」
「令嬢と言う点が問題なので。ダグラス家の名前を出したら女子だとすぐばれると思います。あまりよい評判にならないって、侍女長から散々説教されました。男子校ですしね」
ジェラルドはハッとした。
バディであること。仲が良いこと。男色家だと誤解されていること。
もう、どうでもいい。
全部甘んじて受けよう。アーネストを守るためなら。
「この学校で勉強を続けたければ、このままがベストじゃないかと思います」
「何をそんなに学びたいの?」
ジェラルドは聞いた。
「ホルスト教授に知識と鍛冶屋のドワーフさんに技術を学んでいます。もう一息なのですが」
アーネストの手を見ると爪の先が黒くなっていた。鍛冶屋でまた無茶なことをしているのではないだろうか。ジェラルドは心が痛んだ。
この人に美しく着飾ってもらう訳にはいかないのだろうか。
デートと言っても普段着なので、大きな騎士学校の生徒と小さな騎士学校の生徒が並んで歩いているだけである。
「それが終わったらどうするの?」
「量産体制の研究に入りたいですね。ただ、どうしても騎士団には所属したい。騎士と言う昔の名前が残っていますが、騎士団は国防の中心です。武器は使ってもらえなくては意味がありません」
「俺は出世する」
ジェラルドは突然言い出した。アーネストは顔をあげて、ジェラルドを見た。
「俺に任せれば、大砲なんかいくらでも採用するぞ」
アーネストの紫っぽい青の瞳に、なんだかわからない迷いが揺れた。
「それ、卑怯じゃないでしょうか?」
「現実的だと思うな」
ジェラルドは言った。
「その代わり代償は大きいぞ? 俺に身を売ってもらう」
「身を売る?」
アーネストは青ざめて、一歩後ずさりした。




