第13話 アーネストに結婚を申し込む
落ち着け、俺。
何を言っている。
執事オブ執事の唇が、一瞬、ダラリとなった。
ビン底メガネのせいで表情が読みにくいが、驚いたっぽい。
アーネストが一番冷静だった。
「あいにくだが、私には婚約者がいる」
どんな女の子が婚約者? と、思ったが、違うわ。計算上、アーネストの婚約者、多分、男だわ。
一瞬、かわいい花嫁同士が結婚してるとこ想像した俺の頭、絶対バグってる。
男かっ。
そう思った途端、カッとなった。
絶対許せない!
女子同士の結婚は、ほわわんとしてて絵になるなあとか一瞬思った自分はなんなんだ。男との結婚だなんて、許されるとでも思っているのか。
ここはなりふり構っている場合ではない。俺と結婚するのが一番確実だ。
「俺と結婚すれば、新型大砲の普及が可能になる」
アーネストが顔を上げた。ジェラルドは虚勢を張った。
「俺なら、エリートコースだ。末は元帥だ」
ちょっと自信ないけど。
「俺の成績は素晴らしい」
自分で言うのは変だけど。
「俺と結婚すれば、要塞の研究結果を取り入れられるぞ。ただし、有効性を実証できればな!」
「できる!」
あ、乗ってきた。よしっ。
「では、結婚しよう!」
「すみません、婚約者がおりまして」
執事が割り込んだ。
「アーネスティン様には、もう、婚約者がおりまして……」
三回も言わなくてもわかっている。
「変更したらいいと思う。結婚したら、俺の寮の部屋に住めばいい。授業も受けられる」
「何言ってるんですか、アッシュフォード様。正気ですか?」
「それ、いいな」
「アーネスティン様っ」
「いいだろう。さあ、俺の部屋に引っ越しだ」
アーネストの手を取る。
あー、よかった。ものすごく、真剣に心配してたんだ。
もう、すっごくスッキリした。
アーネストって、女の子だったのかー。
本能って素晴らしい。ちゃんと仕事してたんだ。
るんるるんと、アーネストの手を握って、部屋を出ようとしたところで、厳格そうな執事に道を塞がれた。
「これだから本当にもうっ」
無理やり、手を解かれ、ついでにジェラルドは外へ放り出された。年寄りのくせに意外に力持ちだ。
「アーネスティン様っ。研究が続けられるからって、ホイホイ付いて行ってはいけません」
「だって、ホルスト教授の講義があと半年分残ってるし」
「ホルスト先生をご自宅に招けばいいでしょう! どうせ学者なんか貧乏してるから、公爵家から呼ばれれば大喜びですよ」
「ホルスト教授をバカにしないで。従二位の名誉シュバリエよ!」
あ、ほんとに女の子だった。口の利き方が。
ジェラルドはジーンとなった。
「なんでそんなに軍事バカ」
執事が小さくつぶやいた。失礼な。この執事は無礼極まりないヤロウだ。
しかし、ジェラルドには、やることがあった。
アーネストの相手にも、ぜひ婚約破棄してもらわなくては。
だって、ついにとうとうジェラルドも、真実の愛を見つけたのだ。
ジェラルドは思わずスキップで廊下を走った。
この世はバラ色だ。
俺は男色じゃない。
アーネスト、かわええ。
悩みは全部解決した。




