第10話 婚約者は訳アリ物件?
婚約者に前向きな自分! 母は大喜びするだろうと思ったが、意外な返事が返って来た。読んで、ジェラルドは妙に落胆した。
「マリー・アメリー・アーネスティン嬢も、あんまり乗り気じゃなかったと……」
何か事情があるらしかった。事情のある令息と事情のある令嬢が、うまく噛み合って形だけでも婚約の態を取ったらしかった。
ジェラルドは今、異様な嬌声をあげる平民女子会に辟易していた。彼女たちは、アーネストと自分が睦み合うウチワ作りと、聞きたくないトンデモ話の捏造に邁進している。勝手に、自分たちを妄想のネタにしないで欲しい。
かと言って、彼が婚活相手として脱落した途端、ウンともスンとも言わなくなった令嬢連合は、あまりにも目的があからさまで、これまた好意を持てなかった。そのくせ平民女子会謹製の絵姿や『学園内の秘めたるラヴ』とか言う背中が総毛立つようなタイトルの本?をこっそり買って熟読しているらしい。ますます嫌だ。
このままでは、全方向オール女子嫌いになりそう。節度を持って尚且つ好意的であるべき女子(婚約者)相手に、本来の女子の魅力に触れてみたい。ジェラルドは切実にそう思った。
ジェラルドにさほど関心を持たない、でも、かわいさが香るような女子。
十歳くらいの頃、かわいい女の子に会うと、なんとなく緊張すると言うか気になると言うか、あんな感じ。
婚約者という言葉には、そんな甘やかさが残っている気がした。
しかし、ケビンがどこからともなく噂を聞きつけてきた。
「マリー・アメリー・アーネスティン嬢てさあ……すごい変人だって」
「え?」
勝手になんかいい感じの方に想像していたジェラルドは意表を突かれた。
「侍女も母親の公爵夫人も、娘の話は黙っているらしい。しかも、誰も姿を見たことがないらしい。屋敷に閉じこもっているそうで」
訳アリ物件?
母が逃げ道を作っておいてくれたのは、そう言う意味だったのか!
八方ふさがりの状態に、自分は女運がないんだと、ジェラルドは内心嘆いた。




