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婚約破棄を望んだのは誰?

作者: すじお

王都でも評判の娘、ララ・エヴァンシア。

ララは元は平民だが貴族の家に引き取られて暮らしていた。

彼女は王命によって、侯爵家の嫡男フィリスと婚約を結ぶことになった。


──だが、婚約の直前からフィリスは豹変した。


「お前のように平民上がりの女を妻にするのは屈辱だ」


そう吐き捨て、ララを力で押さえつけ、頬を打つこともあった。さらに、彼は狡猾に罠を仕掛け、ララが意に沿わぬ形で他の男と一夜を過ごしたように見せかけた。


社交界では「放蕩令嬢」と噂が広まり、ララは俯くしかなかった。


やがて、婚約発表の場でフィリスは大声で宣言した。


「ララ・エヴァンシアとの婚約は破棄する! 彼女は婚約者を裏切り、他の男と通じていたのだ!」


集まった貴族たちはどよめき、ララは身を震わせた。彼女に弁解の余地は与えられず、その場では誰も彼女を庇おうとはしなかった。


だが数ヶ月後、王宮にひとつの密告書が届く。

そこには──フィリスと愛人である伯爵令嬢カティアが、互いに手を組み、ララを貶めるための細工をしていた証拠が記されていた。


使用人の証言、偽りの文書、そしてララに酒を盛った日の記録。

すべてが揃い、ついに真実が白日の下にさらされた。



「な……何故だ! 私が悪いのではない、あの女が──!」


王の前に引き出されたフィリスは取り乱し、隣で震える愛人カティアの手を掴んだ。

しかし、王は冷ややかに言い放つ。



「無実の娘を陥れ、己の醜聞を隠すために虚偽を重ねた。その罪、余は許さぬ」



その日、フィリスとカティアは爵位を剥奪され、牢へと送られた。


けれども、それで終わりではなかった。



牢に繋がれて数週間後、二人は護送中に待ち伏せしていた盗賊に襲われた。護衛の兵たちは応戦したが、囚人を守る理由はなく、戦いの混乱の中でフィリスとカティアは逃げ場を失った。



「フィリス様……助けて……!」

「黙れ! すべてお前のせいだ!」



互いに責任を擦り付けあう二人は、最後には刃に倒れ、無残に命を落とした。

その報せが王都に届いたとき、ララはただ静かに目を閉じた。


「因果応報……ですね」


彼女を支えてくれた家族や友人の手の温かさが、冷え切った心にようやく戻ってくる。

そしてララは、新たな未来へと歩み出すのだった。

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