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Tokyo Dusk  作者: 藤宮 柊
6章『邂逅』
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【Scene02:帰還】



夜の街は、雨上がりの熱をうすく纏っていた。

濡れた屋上の床がネオンを砕いて返す。低い雲、浅い風。


牙の面々は、任務帰りの息をそろえるように、手すり際で小休止していた。


「ふあ〜……もう歩けない……足が棒……」

ヨルが背伸びし、ガードレールに頬を当てる。


「足だけで済んでるなら上等だ」

レインは無表情で煙を吐き、しかし無言でヨルにドリンクボトルを押しつけた。


「にしても、想定より時間を食いましたね」

咲間が街の灯を見下ろし、肩で息をつく。


「僕の計算では十分快縮できたはずなんだが」

アリステアは手袋を外し、端末に指先でログを流す。


「その計算が信用ならないから足が棒なんだよ!」

ヨルはフードを脱いで、おにぎりを取り出した。


「……部屋で食え」

クロノの指摘は淡々として、棘がない。帰還直後の“ぼやき”は、この家の合図だった。


ウィステリアは黙ってそれを眺めていた。

風に揺れる黒髪を耳に払って、雨粒の残る夜空を見上げる。


誰かがいない夜は、少しだけ音が多い。

それでも、こうしてみんなが無事で戻ってきて——


「……ただいま、かな」


ぽつりとこぼれた声に、頬をゆるめる気配が広がる。


その瞬間——


インカムが、ごく小さく軋んだ。


ザ……ザザッ……


「ん……?」


混線を疑って指先で調整しかけた、その時。


──『なあ、姫』

──『覚えてるか? オレの声』


指が止まる。空気が、凍る。

誰より先に、ウィステリアだけが理解していた。


──『もう一回、殺されに戻ってきてやったぜ』


その声音は、確かに微笑んでいた。あの日のまま。


ウィステリアの手が震える。振り返ったクロノは、その表情だけで言葉を失った。

レインが眉を寄せ、アリステアと咲間の視線が細くなる。

ヨルの指から、おにぎりがするりと落ちた音が、やけに遠い。


「……縁……?」


震える呼気が、雨上がりの夜を揺らした。


——亡霊が、帰ってきた。



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