【Scene15:Jealousy Protocol】
柔らかなランプの下、低いテーブルに湯気の立つポット。
クロノ、レイン、ヨル、そして“新顔”のアリステアが輪になって座っていた。
棚のマグは相変わらずバラバラで、クッキーはもう半分がヨルの口に消えている。
「──あのさ」レインが淡々と言った。
「“姫扱いムーブ”、完全に落としにきてたよな。あの騎士の口づけ、反則」
クロノは茶を置き、眼鏡の奥で肩だけ笑う。
「俺も思った。演出値が高すぎる。俺たちの積み上げ、どこいった」
「ねえ聞いてアリステア!」ヨルが両手をぶんぶん振る。
「あれズルい!心が『うわぁぁぁ』って爆発した!」
アリステアは頬をほんのり染めたまま、静かに紅茶を口に運んだ。
「……心からの誓いでした」
「それがズルいんだって!」ヨルが机に突っ伏す。
「俺も“姫君”って呼べばよかったか?」とレイン。
「似合わねぇよ」クロノが即答する。
「それはそれで傷つく」とレインが顔をしかめた。
「じゃあさ、俺も忠誠のキスとか──」とヨルが言いかけ、
「ヨル、黙れ」クロノとレインが同時に制した。
一拍の沈黙。次の瞬間、全員がふっと笑う。
アリステアも肩をわずかに揺らした。からかわれるという感覚が、彼には新しかった。
「……ありがとう」アリステアがぽつりと言う。
ヨルは親指を立ててにっと笑った。
「うぇるかむ・とぅ・ふぁんぐす!」
レインは無言でアリステアのカップに注ぎ足し、クロノはテーブルの端を整える。
湯気が上がる。笑いが残る。
新しい“家族の温度”が、ゆっくりと部屋に満ちていった。




