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Tokyo Dusk  作者: 藤宮 柊
3章 『解体』
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【Scene03:源を断つ】



薄暗いブリーフィングルームに、ホロプロジェクターの青白い光が満ちる。

壁面に記憶改編技術研究局の構造図が立体で浮かび上がった。


レインの指先が、一角を示す。表情はいつになく険しい。


「……ここが、《百目羅刹》の中枢、“記憶改編技術研究局”。」


「本来は国の機密研究施設って扱いだが、裏を取った。……こいつは完全に“奴ら”の手に落ちてる。」


「……記憶改ざんの源を断つってことね。」


ウィステリアの声音は静かだ。怒りよりも、確信がある。


クロノが腕を組み、表示を切り替える。各階の配線図とアクセス経路、出力ログが重なる。


「問題は、内部構造の大半がブラックボックスだ。表向きは“神経再構築”の医療応用って触れ込み……だが、データの改ざん頻度と量からして、真の目的は“人の記憶そのものの塗り替え”。」


レインが短く息を吐く。


「……どれくらいの人間が、その手にかかってるのか見当もつかないわけか。」


「下手したら、世界そのものを“書き換える”レベルだな。」


ウィステリアは背筋を伸ばしたまま、わずかに目を細める。


「なら、止める。……一番奥にいる“本当の敵”も含めて。」


室内に、一瞬の静寂。


ソファからヨルが立ち上がる。包帯は残るが、目の焦点はぶれない。


「……俺も行きたい。まだ完全じゃないけど…。あそこが、記憶を……人の心を壊してる場所なら、俺の目で確かめたい。」


ウィステリアは一瞬だけ彼を見て──小さく頷いた。


「行こう。……これは、“壊すための戦い”じゃない。

 “奪われたものを、取り戻すための戦い”よ。」


レインが口角だけで笑い、軽く肩を回す。


「まぁ……とりあえず、だ。“視察”にでも行ってくるよ。」


クロノが端末を叩き、ホロに差し色のルートが走る。出撃準備の合図だ。


静かに、だが確かに、**《ファングス》**の行軍が始まろうとしていた。



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