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Tokyo Dusk  作者: 藤宮 柊
2章 『姉弟』
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【Scene10.5:目覚め】



──重い。

でも、意識はある。

目を開ける前からわかる。冷たい空気。金属の匂い。皮膚に食い込む帯の圧。


ゆっくり瞼を上げる。

白い天井。淡い光。


耳の奥で、低い機械音が唸っている。


「……チッ、やられたか」


息を吐いて動こうとする──が、身体は固定されていた。

手首、足首、胸。

しっかり締められている…わずかに指先が痺れる。


「……ったく、姉さんにまた怒られんぞ、これ」


苦笑が漏れる。記憶は飛んでない。

姉さんの声。目の前の影。


麻痺針の刺さる感触まで、ちゃんと残ってる。


──敵の拠点。

──俺は囮にされた。


状況はわかってる。立場も。


だけど、負けてない。


「“記憶書き換え”とか……冗談じゃねぇ」


口にして、気持ちを定位置に戻す。


足音。


視界の端にフードの男が現れる。白衣。手には記録装置。

顔は影に隠れているが、口元の癖だけは見えた。


「……まだ落ちないのか。ふむ、しぶとい」


薄く笑う声。


「ま、焦らなくていい。どうせ、すぐ“自分が誰か”わからなくなる」


俺は目を細め、はっきり返す。


「そうか? 俺ははっきりしてるけどな。……ウィステリアの弟分、“ヨル”だよ」


男が一拍、黙る。


「記憶ってのはさ、壊れやすいくせに、しぶといんだよ」


拘束されたままでも、視線は逸らさない。


「……いじってみろよ。“書き換えられねぇ”記憶、きっとあるからさ」


男が近づき、針が腕に刺さる。

冷たさが血管を這い、鼓動のリズムがわずかに乱れる。視界の輪郭が滲む。


意識が──再び、沈んでいく。



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