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Tokyo Dusk  作者: 藤宮 柊
2章 『姉弟』
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【Scene10:突入直前】



廃墟ビルの外縁、かつてショッピングモールだった区画の地表に、封鎖された地下鉄のサービスハッチが口を開けている。


街灯の届かない暗がり。黒ずんだ瓦礫とガラス片。鉄と湿気の匂いが肌に貼りつく。周囲では(ファングス)別支部の小隊が低い声で位置を確認し合い、外周を固めていた。


クロノは手首端末にホロマップを展開し、赤いマーキングを指でなぞる。


「……敵の離脱ルートは三つ。消えた気配はこの地下鉄遺構。ここに百目羅刹の一時拠点があると見る」


投影が淡く光り、地中の断面構造が浮かぶ。


「各部隊、配置に移れ。南西アクセスはレインが先導。北側メンテ階段からは《アルゴ》班が補足に入る」


クロノは視線を落とさず、続けた。


「主突入はここ──サービスハッチからの直降下。……そこはウィステリアの担当だ」


「了解。盾も火力もいらない。──私が行く」


ウィステリアの声は静かだが、奥に熱を宿していた。


「警戒すべきは“記憶改ざん装置”。使われる前に潰す。敵主力が出てきた場合、集合、最優先で“ヨルの確保”を」


レインが舌打ちし、ナイフを弄びながらぼやく。


「ったく……普通の殴り合いじゃねぇんだよな、あいつら」


「だけど、どれだけ歪んだやり方でも──生身で来る限り、“叩き潰せる”ってことだろ」


ウィステリアが前を向く。その言葉に、レインが薄く笑った。


「姫様、らしいな」


「……名前で呼べ。いい加減」


クロノが全員へ向けて遮るように告げる。


「ヨルは生きている。だから“お前らが”殺すな」


空気が一瞬、硬く締まる。


「最終確認。(ファングス)全隊、準備はいいか」


「応」


クロノの端末が静かに点灯した。


> Operation Code: GR-88 ──突入開始。




ウィステリアが一歩、ハッチの闇へ足を踏み入れた。



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