【Scene07.5:再起動】
沈黙の間(Grave Room)。**The Echo(記憶の残響)**の最奥。
暗い室内に、戦術マップとホログラムの薄光だけが揺れている。硬質の椅子に身を預け、グレイヴは卓上のファイルを無言で見つめていた。
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任務報告:#YZ-0427
状況:不完全終了
損害:人員一名 行方不明
責任者:ウィステリア
> 「奪われた。目の前で。あの子は……生きてる」──Wisteria
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指先が音も立てずにスクロールを止める。
一瞬、沈黙が深くなった。呼吸は乱れない。表情も動かない。ただ、照明が頬を斜めに撫でたとき、眉がわずかに動いた。
「……“躊躇”か」
グレイヴは立ち上がらず、報告書を閉じ、別のホルダーを開く。
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対百目羅刹 特別行動ログ
【極秘コード:miho_Reset】
発動条件:Wisteria または Chrono の“判断不能”時
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指先が、起動アイコンの手前で数ミリ浮いた。
……そして、引いた。
「まだ早い。今は“牙”の判断に任せるべき時だ」
低く、自分に言い聞かせるように呟く。椅子に深く沈むと、静寂が戻った。
脈打つマップの光がガラスを渡り、その瞳に映る。そこには、弟を奪われた“姉”の背に揺れる炎が、確かに焼きついていた。




