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Tokyo Dusk  作者: 藤宮 柊
2章 『姉弟』
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【Scene04.5:観測者の瞳】



**The Echo(記憶の残響)**の中枢、情報フロア。

ロビーと戦術エリアをつなぐ監視モニター群の前で、クロノは静かに紅茶を啜っていた。

ホログラムの光が手元を淡く照らし、複数のウィンドウが指先の動きに従って滑る。


視線は、物資室のカメラに映るヨルへ固定されている。

金属棚の端、装備を前にして立ち尽くす青年の背中。肩がわずかに震えていた。


(………震えてるな。)


臆病ではない。迷いと、それを飲み込もうとする“覚悟”の揺れだ。


(まだ誰も殺してない。それなのに、今のアイツは──誰より行きたがってる)


ヨルは、ファングスの中でも異質だった。

殺意より先に、信頼で動こうとする。

本来それは“牙”に最も向かない在り方のはず──だが。


「……あいつ、あの人のことだけは、ずっと信じてるんだよな」


クロノは別のフィードを呼び出す。

裏手の出撃口近く、ベンチに座るウィステリア。

指輪を弄び、煙を吐く。

空気がひと筋、鋭くなる。


(牙の毒。処刑人。誰も寄せつけない鋭さ。……けど)


ヨルだけは、まっすぐに彼女の背を追っている。

そしてそれを、ウィステリアも──


(たぶん、捨てきれてない)


小さくため息。カップを置き、クロノはモニターの一つに触れてログを切った。


「無事に帰れよ。めんどくさい姉弟だな、ほんと……」


その声には、わずかに“願い”の温度が混じっていた。



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