19 ふたりの今後
目が覚めた時、見覚えのある部屋かもと思った。
勘は正しかった。淡い緑色の壁、透き通った新緑のような色のカーテン。……病室だ。
あたしはそんな部屋の薄いエメラルドカラーのベッドで寝ていた。
「力の使い過ぎで倒れたんだってさ」
声がして、その方向を見た。でも視界はぼんやり。
あたしは今、眼鏡もコンタクトもしていないらしい。
ちあちゃんの声だ、ということだけは分かった。
「はい」
と、手渡されて、眼鏡を掛けた。
「ごめんね、面倒……掛けて……」
「面倒なんかじゃないよ」
微笑むちあちゃんはどう見ても凛々しくて、あたしの天使であり王子様。きっとそれは変わらない。
――あたしなんかでいいのかな。……って言ったらきっと、ちあちゃんも、あたしと同じことを言うんだろうな。……いや、それ以上のことを言うかも。こんなに凛々しいんだもん。
今後、STEOP能力に頼らないことを増やそうと決めた。
――とりあえず、皿洗いや洗濯……そういうのは普通にやろうかな……そういうのから少しずつ……。
自然と、コーヒーカップやグラスなんかの思い出に触れる時間が長くなった。意外とイイことずくめ。たまに思い出す、あの時の笑顔なんかを――あの時の想いなんかを。
そして。
一週間後。
今日はちあちゃんのご両親と会ってみる日。
初めて会う日だ。緊張する。
その家は一軒家だ。
その前へと、ちあちゃんと、横並びで立った。
「ただいまー」
「お邪魔しまぁす」
こちらのあいさつに対する、
「いらっしゃーい」
「石田むつきさん、来たぞ!」
「え! 本当っ? 待って待って!」
という明るい声を聞いただけで、あたしは、
「ああ、やっていける」
と、なぜか思った。