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17 今だからこそ。今を知る。そして、今は、まだ。

 ほどなくして、あたしとちあちゃんは、同棲した。

 直近のこともあり、マネージャーの遠藤(えんどう)さんから、

「住む所を変えよう」

 と言われていた。大きな理由だ。

 どちらの家でもないマンションの一室に、今はふたり分の荷物がある。余分な家具、家電などは売ったりリサイクルに出したり捨てたりした。

 このことを両方の実家に伝えたけれど、うちの親からは「それでいいのか」とか「ああ」とか「うん」くらいしか返されなかった。

 妹も、なぜか、あたしの仕事に関して、

「お姉ちゃんはまあ、凄くよかったけど、一緒の人がちょっと……ちゃんとやってなくない?」

 なんて、新人かどうかとか、何かあったんじゃないかとか、考えずに批判してあたしを褒めた。それが何だか嫌だった。

 ちあちゃんの親は違った。

「今度会いましょうよ」とか「こっちから今度いつ行ける?」とか、前向きで明るかった。

 その声を向けられるちあちゃんが正直うらやましい。

 新居でたまにテレビを見る。ふたりで。進んで見ることはそんなにないけれど。

 ある時、ニュースであの件が報道された。旅館でちあちゃんをこけさせた男に指示したのは、実は村田(むらた)だったらしい。これで本当の解決。


 それから。

 本土で仕事をすることもたまにあり、そんな時は、以前からあたしを知ってくれている人のうち何人かが味方をしてくれた。汚れた時はあたしのSTEOP(スティープ)能力で新品に戻す。そうできない時はまた別の解決法で……。

 助けを率先してくれる人もいた――それは、いつかあたしが助けたことがあった人だったり、そうじゃなかったり。こういう縁は大事にしたいなと思う。

 たまのデートではちあちゃんを優先したり、あたしを優先したり。そうやって互いの好きなことを沢山知っていって、「好き」が広がるのを楽しんだ。

 ゆっくり。ゆっくりでいい。

 あたし達は自分たちのペースで歩いた。これからもきっとそう。そんなゆっくりとした速さになったのは――お互いに合わせたいと思う相手がいるからだと思えた。

 互いを見つめる。少しずつ。

 互いをよく見つめるからこそ、少しずつ。

 今はまだ、触れ合うだけ。

 手と手で触れ合うだけ。まだそのくらいでいい。

 育んだ想いの方が、きっと大きくなる。あんな闇なんか負かすくらいに。それまで育んでいく。

 今は今を大事にする。それでいい。

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