第6話 婚約破棄もわたしが手配
わたしの無言に耐え切れなくなったのか、我が母が
「辛いでしょうが、婚約は早く解消しなくてはね」と言った。
だから早く書類を持ってこい。解消より破棄希望と無言を貫く。
「だってね、メラニーはお母さんになるの」と母が言うと全員がうなずいた。
お母さん!・・・・なるほど・・・早い方がいいわね。この猿どもという思いをこめてショーンをじっと見る。
「だからごねるんじゃない。さっさと破棄するんだ」と我が父が言うので
「破棄でも解消でもします。書類を」と言うと
振り出しに戻ったのか、皆が気まずそうな顔をする。
「おまえがここにいるとおなかの子供に危害を加えられそうで心配だから出て行け」と我が父が言いだした。
わたしはさっと立ち上がると
「わかりました」と言い部屋をでようとしたが
「待ってお姉様、結婚式の準備を一緒にしたいの。わたしはお姉様がわたしとショーンの子に危害を加えると思っていません。お姉様お願い・・・・準備する楽しさをお姉様にも味わって欲しいの」
「罪滅ぼしにそれくらいやればいいな」と我が父。
「頼んでいいかいマリア。僕も君を放り出すのは望まない」とショーンが優しく言った。
わたしはあなたたちを放り出すのを望んでるけど。
「書類の用意をします。早いほうがいいですね」
誰もなにも言わないうちに部屋をでた。
あの人たちの挙動不審は本当にわたしの暴力を気にしてたのか。まぁ結婚式の準備なんてものも経験するのもいいかも。
なんせあいつら全員まとめて破滅させられる爆弾を持っているんだもの・・・・・持ち上げて落とすって最高だよね。
「婚約を破棄する用紙を下さい」と大声で役所の窓口で言うと
「破棄でいいの?解消もあるけど」
「違いがあるんですか?」
係員同士がちらっと笑いを交わしたのがわかったが気づかない振りで質問した。
「たいした違いはないけど・・・・・誰と誰の婚約の話しかい?」
「わたしと婚約者です」と言うと
「お嬢さんの婚約?本人なの!」と係員が言うとまわりで待っている人たちがさりげなくこちらに近づいた。
「はい、わたしの婚約です。破棄と解消で用紙が違いますか?」と大きな声でわかりやすく言うと
「うん、文章が違う」と係員が答えると
「それに聞いた人の印象が違う」と別の窓口の係員もこちらに来て言った。
「破棄だと慰謝料の請求が出来る。払わないとなったら裁判だけど必ず勝てる。金額は少なくていいんだよ。相手が悪いって世間に示せる」
「なるほど。別の相手に子供が出来てると破棄で慰謝料貰えますよね」と言うと
「貰えるよ。楽勝だ。破棄だ」と係員が返事すると
「ひどいなぁ。だけどそんなのは貧乏くじの相手だぞ」
「慰謝料貰わないとな!」とまわりの声も大きくなった。
「腹に子供がいるのなら、すぐに結婚した方がいいだろう」と見物人の一人が言った。
わたしは当事者だけど見物人の一人として
「「「「そうだ」」」」と思った。