第3話 疲れる日々
家に戻るといつもより早かったせいか、家族三人の声がした。
三人がいる居間のドアを開けると、お菓子とお茶が並んでた。帰宅の挨拶をすると
「今日は早かったな。ちゃんと仕事したのか?」と父親が不機嫌そうに言い、
「お父様、お姉さまはいつも一生懸命です。家族であるわたし達が理解してあげないと」とメラニーが言い
「メラニー、さすがよくわかっているわね」と母親が続けた。
なにも言えずに黙っていると
「いつまでぼさっと立ってる。さっさと行け」と父親が手を振った。
メラニーが
「お父様、お姉さまがお菓子を見てましたわ」と言うのを聞きながらドアをばたんと閉めた。
「いやしいやつだ」と父親が言うのが想像できた。
宝くじを換金したお金で、焼き菓子と日持ちがする黒パンを買って来たのでは部屋でゆっくりをそれを食べた。
それから腰をいたわってベッドに横になった。
翌日はノックの音のない目覚めだった。
他の家族はまだ寝ているのか、静かだった。身支度をすませて店に行くと義母が倉庫の整理をするように言って来た。
「あなた最近さぼってここに来ないから仕事がたまっているわよ」
お祖父様の所に行っているのは知ってるでしょ。この前も変わってあげたじゃないと思ったがため息をつくだけにした。
「マリア、大丈夫?意地悪言ってるんじゃないんだよ。マリアに仕事を覚えて欲しいからつい言っちゃうんだよ。それと店番もよろしくな。俺たちはお祖父様の看病があるから」とショーンが声をかけて来た。
「結婚だけど、デイジーを待ってられないから準備を始めるって言ったんだよ。そしたら良いって」
「ほんと?結婚出来るの?」と言ったものの嬉しくなかった。
「うん、派手にはできないけど、精一杯のことをさせて欲しい」
ショーンはわたしをぎゅっと抱きしめると、
「楽しみだよね」と言った。
店が終わると家に戻った。家族は食事をしているようだがわたしの分はない。
いつものように鍋に残ったスープを食べて片付けをした。
今日は店だけだったので、余力のあったわたしは、部屋に戻ると結婚用のレースのベールを編み始めた。
これは長ければ長いほど価値があるとされていて、わたしは婚約期間が延びたのもあるが、ウエストに届く程長くなっている。
糸を一度に買うわけではないので、よくみると微妙に色が違うのが普通だが、わたしは浄化ができるので、色斑のないものになっている。
ベールを編んでいると結婚式が楽しみになって来た。結婚はどうでもいい・・・