第14話 僕は三男坊
貴族の端くれ、領主の分家。その三男坊なんてただの穀潰しというのが世間の見方だ。
だが、うちの親は少しだけ土地をわけてくれるつもりだったようだ。僕はそこを足場に生きて行くつもりだったが、時代が大きく変わった。それで僕はその土地を貰うのをやめた。兄上に活用してもらった方が家の繁栄につながると思ったからだ。
実家が栄えているとその実家の出だというのが僕の価値を上げるし、僕の価値が上がれば実家を高く評価してもらえる。
兄上と下の兄上、そして僕。三人で頑張るんだ。
そのことを婚約者のデイジー・シリウスに言って一年待って欲しいと頼んだが、彼女は婚約破棄を選んだ。
僕はすごく悲しくて少し悔しかった。デイジーと幸せになりたかったのに・・・・
僕は現金と母上の宝石を貰ってうちを出た。宝石はいらないと断ったけど、宝石箱のなかで眠っているより世間を見せてやりたいのよと茶目っけたっぷりに言って僕に押し付けた。
やってみたい商売は決まっていた。自動車だ。まず運転を習い自分で整備できるように学んだ。
一台購入して街をぐるっと一周して料金を取る商売を始めた。
なんどか利用するお嬢さんと親しくなった。彼女が運転したいと言い出したので、運転を教えた。
彼女が運転、整備ができるようになった時、一つ閃いた。
街中で彼女にタイヤ交換して貰ったのだ。特別なものである自動車を女性が運転するだけでも目立つのに。タイヤの交換を若い女性がやっているのだ。
大勢の見物人が出た。もちろん、お手伝い志願者も・・・・彼らは彼女の指示に従ってタイヤを転がした。
三人の男性が運転を習いに来て、三人とも自動車を購入した。
運転を習った人に、期間限定で車を貸す事業は大当たりをした。
母の宝石は三台目と四台目を同時に購入するときに世間に出て行った。家のほうを向いて母に感謝した。
それから、シリウス家で騒動が起きた。聞いたとき理解できなかった。
デイジーとその両親から連絡があったが、会うことはないとだけ返事をした。
ちょうど、仕事を大きくしようと無理している時期だったのも良かった。余分な事を考えずに済んだから・・・・
そして願い通りに大きな事業となった。実家とつながりのあった家もこちらとの取引を望むようになり、人脈は領主様のものにまでふくらみ、取引は対等の関係で結ばれた。
やがて、会社を設立する時のパーティに母を招待して、美人の母上を自慢したいからと装身具を贈った。
「この宝石は母上の宝石箱が気に入りそうですね」と兄上が僕に笑って言うと、母上が黙ってうなづいた。
母の首にしっとりとおさまった輝きは、僕の誇りを表していた。




