第13話 後ろ姿
母親目線
わたしの最初の子はマリア。マリアが生まれた時、我が家は領主様の分家の分家でささやかながら貴族とのつながりがありました。
領主様はお祝いを下さいました。華やかなお仕着せを着た使いの方が届けて下さいまして、それはそれは誇らしく嬉しいものでした。
それが、時代が変わり我が家はあっという間に、庶民の暮らしになりました。二番目のメラニーが生まれた時は領主様のお祝いはなく、もらえたのは近所からのお祝いの言葉だけでした。
マリアは聞き分けのいい優しい子で、すすんで家事を手伝い、メラニーの面倒もみてくれました。
それで様子をみて女中も減らしました。
最初にメラニーを可哀想な子と思ってしまったわたしたちは、恵まれたマリアが我慢するのは当たり前と思うようになりました。
やっと工面して祭りの晴れ着を買うときにメラニーが二枚欲しがって泣き喚いた時、つい言ってしまいました。
「そうだね、姉だから妹に譲ってあげなさい」一枚しかないのを譲れはまだわかります。二枚あるのを二枚とも譲れは酷いですよね。だけどわたしはしたり顔でそう言いました。
マリアは黙ってわたしに従いました。
当日、丈の短い服を着たマリアは膝をまげて歩いていました。
「姉さんに服を貸してあげてるの」得意げに言い放つメラニーにマリアは寂しく微笑みました。
領主様が下さったお祝いの品もメラニーのものになりました。
マリアのイニシャルが刻まれたペンダントです。みなが貰ったありふれたものですが、分家の集まりに誇らしげにつけて来るものです。
マリアは一度もつけて行ったことはありません。
「次はマリアの番ね」とわたしは言いましたが、一度も実現しませんでした。
イニシャルが同じというのも皮肉な事ですね。
そして婚約者も譲りました。わたしはマリアならショーンを譲っても、もっといい人が現れる。そう思っていました。
多分、そうなっていたと思います。でもマリアは遠くに行ってしまいました。
そして全てが変わりました。小さな家をみんな売りたがりました。でもわたしはガンとして譲りませんでした。
マリアが帰って来る場所を無くしたくありませんでした。マリアが絶対に帰って来ないこともわかっていました。だけどたった一つだけ、マリアの為にしたかったのです。なにかしたと思いたかったのです。
結局これはいい判断でした。最低住むところはありますので・・・・・マリアからの最後のおもいやりと思うのは自分勝手ですね・・・・・
教会に来た人がマリアかも知れないとメラニーが、走っていきました。よたよたと太った体を揺すって・・・・
だけど自動車はあっという間に消えてしまいました。
メラニーがのそのそと戻ってきます。この子を可哀想な子にしたのは、わたしですね・・・・・




